保険が適用されない自由診療が中心であり、利益率が高い美容クリニック。新たに開業することを検討している方も少なくないのではないでしょうか。
美容クリニックを開業したばかりの頃は認知度が不十分で思うように集客できないことが多く、経営が軌道に乗るまでには時間がかかります。安定した経営を続けるためには、余裕を持って開業資金を確保することが欠かせません。
今回のコラムでは、美容クリニックの開業資金について詳しく解説していきます。資金を確保するための融資についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
美容クリニックを開業する流れ
- 開業資金の確保
- コンセプトの策定
- 物件の選定
- 内装工事の進行
- スタッフの確保
- メニューや料金の設定
- 集客手段の検討
- 備品の用意・カルテの導入
- 開業手続き
- スタッフ研修・開業準備
美容クリニックを開業する際には、以上のような手順を踏んでいきます。中でも、開業手続きについては特に注意が必要です。
美容クリニックを開業する場合、医院を開設した日から10日以内に保健所に届け出ることが医療法で義務付けられています。ただし、事前に相談することなく届け出をした場合、そのまま受理されることはまずありません。
保健所に相談しながら医院の内装イメージを具体的に固め、工事が終了した後に立ち会い検査を受けた上で開業届を提出するという流れを経ることが一般的です。保健所とのやり取り一つ取っても膨大な時間がかかります。
- 医師免許証のコピー
- 保証人の収入証明書
- 医療機器の見積書
- 履歴書
- 事業計画書
- 建築費の見積書
開設届の他に、上記のような様々な書類を保健所に提出しなければなりません。さらに、税務署や消防署への手続きも必要となります。
以上を踏まえると、クリニックを開業する際にはスケジュールにかなり余裕を持って準備を進めるべきです。少なくとも開業予定日の1年前には事業計画を策定しておくことをおすすめします。
美容クリニックの開業資金はいくら必要?
美容クリニックを開業する際に必要な資金はおよそ5,000万円〜1億円と言われています。他の診療科のクリニック(~8,000万円)や美容系サロン(200~300万円)と比べて多くの費用が必要となります。
美容クリニックの開業資金が高額になりやすい理由として、以下の3点が挙げられます。
- 医療機器が非常に高額である
- アクセスの良さや外観が重要視される
- 外観や内装にこだわる必要がある
医療機器が非常に高額である
美容クリニックの開業資金が高額になる最大の理由として、高度な医療機器を導入しなければならないことが挙げられます。
- レーザー脱毛
- シミ取り
- シワ改善
- 医療ハイフ
一般的な美容クリニックでは、主に以上のような治療を行います。中でも人気の高いシミ取りやシワ改善といった施術で使用するレーザー機器は数千万円かかるものが多く、導入時に莫大な費用が発生します。
幅広いメニュー展開を検討している大規模なクリニックでは、複数の機器を導入したり多くの機能が備わった複合機を取り入れなければならず、さらに多くの資金が必要となります。
アクセスの良い立地が重要視される
美容クリニックの集客力をアップさせるためには、主なターゲット層となる20〜40代の女性にとってなじみのある場所に建物を構えることが欠かせません。ターゲットが集まる地域や居住地、アクセスの良さを考慮して以下のような場所で開業することが望ましいです。
- アパレルショップが集中するエリア
- 商業施設が併設されている地域
- ターミナル駅の近く
しかし、好条件の立地に医院を構える程テナント料は高額になりやすい傾向にあります。
外観や内装にこだわる必要がある
美意識の高いお客様に好まれる美容クリニックにするためには、医院の第一印象を左右する外観は美しく整っている状態が理想です。清潔感や高級感にこだわった内装を取り入れることも求められます。
築年数の浅い建物を選ぶと、テナント料は高くなる傾向にあります。内装に関しても、インテリアや壁紙、小物にこだわると当然費用がかさんでしまいます。
美容クリニックの開業資金の内訳
先述したように、美容クリニックを開業した直後は十分な来店数を確保することが難しく、経営状態が不安定になりがちです。
しばらく赤字経営が続くことも考えられるため、開業後3~6カ月程度のランニングコストは、開業資金の一部として用意しておくことをおすすめします。
ここからは、開業準備に必要な初期費用と開業後に発生するランニングコスト、それぞれの詳細な内訳をご紹介していきます。
初期費用
- 医療機器代
- テナント料
- 内装工事費・インテリア代
- 備品代
- カルテ・予約システム導入費
- 広告宣伝費
- 求人広告費
美容クリニックを開業する際には、主に上記のような初期費用が必要です。先程もお伝えしましたが、医療機器の導入費が特に大きな割合を占めています。
医療機器はクリニックのメニュー展開や施術の効果を左右する重要な要素であり、顧客満足度や集客に直接影響します。開業資金を削減したいがために、安価な機器を取り入れるのはおすすめできません。
価格や施術の効果だけでなく、以下のようなポイントを押さえて、クリニックの売上アップに寄与してくれる医療機器を選んでみてください。
- 医師の得意な施術を行える
- ターゲットのニーズが高い施術を行える
- メーカーの保証やサポートが充実している
ランニングコスト
- 光熱費
- 水道代
- 広告宣伝費
- 人件費
- 薬剤・備品代
- 家賃
- 医療機器や設備の維持費
クリニックを経営していく上で毎月発生するのがランニングコストです。具体的には、上記のような費用が必要となります。利益率をアップさせて経営状態を改善していくためには、ランニングコストを節約することが大切です。
それぞれの項目について毎月かかった費用を記録し、必要以上に予算をかけていないかを常に振り返りましょう。
美容クリニックの開業資金を確保するには?
美容クリニックを開業する際に必要となる膨大な資金を自分だけで確保することは難しいです。十分な資金を確保するためには、融資をうまく活用することが求められます。
- 融資条件(自己資金・必要経費など)を確認する
- 必要書類(身分証明書・不動産の契約書など)を提出する
- 融資担当者との面談
- 審査
- 融資の決定
融資の手続きは、上記のような流れで進めていくことが一般的です。
審査に通過して融資を受けるためには、事業計画書を始めとした多くの資料を用意し、返済できる見通しが立っていることを明確に示さなければなりません。面談で担当者を納得させるプレゼン力も求められます。
入念な準備が必要となるため、融資を依頼する際はスケジュールに十分な余裕を持って進めていくことをおすすめします。開業予定日の1年~1年半前から事業計画の策定を始めておくと良いです。
美容クリニックの主な融資先
美容クリニックを開業する際には、主に以下のような融資先を利用することができます。
機関 | メリット | デメリット |
---|---|---|
日本政策金融公庫 | 固定金利での借入 | 融資限度額が少ない(開業時は1,000万円) |
自治体の開業支援ローン | 低金利で審査が通りやすい | 融資決定までに時間がかかる・開業地が限られる |
医師会の開業支援ローン | 無担保で融資を受けられる | 地方医師会への加入が必須・開業地が限られる |
銀行・民間金融機関 | 返済期間が長い(10年前後) | 大手銀行は審査のハードルが高い傾向にある |
医療機器のリース会社 | 医療機器のリースとまとめて利用できる | 金利が高い |
地域によっては自治体や医師会の開業支援ローンが設けられていない場合がある、大手銀行では審査のハードルが高いなど、機関によって特徴が異なります。金額や返済期限といった希望条件と機関の特性が合致しているかを吟味した上で、融資先を検討しましょう。
美容クリニックの開業資金を削減するには
お伝えしているように、美容クリニックの開業資金は非常に高額です。数千万円単位のお金が一気に動くことで金銭感覚にずれが生じ、数十万円程度の金額が少額に感じられ、必要のない投資を軽い気持ちで行ってしまうリスクが考えられます。
開業後の資金繰りに余裕を生むために、薬剤や小ぶりのインテリアといった細かい項目についても現実的な視点で捉え、費やす金額を決めていくことが大切です。
別途で費用は発生するものの、経営方針や開業資金を削減する手立てについて以下のような専門家のアドバイスを受けるのも1つの手です。
- 開業コンサルタント
- 税理士
- 社会保険労務士
医療機関の開業に精通している方も少なくないため、ぜひ力を借りてみてください。
開業後の資金繰りも考慮して予算を配分しよう
美容クリニックを開業する際には、他の診療科のクリニックや美容系のサロンと比べて高額な費用が必要となります。しかし、予算管理を怠らず、医療機器や内装といったお客様の満足度に直結するポイントに十分な費用をかければ、経営を安定させることも可能です。
開業したばかりの段階ではクリニックの売上が安定しない可能性があることを加味した上で、余裕を持った資金繰りを心掛けてみてください。
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