エステサロンを経営していると、顧客満足度をアップさせるための動きやサロンワークをスムーズに進めるための取り組みに重点を置きがちです。しかし、エステサロンの経営状態を安定させるためには、経理業務も決しておろそかにはできません。
経理業務を怠っていると、サロンの財務について把握しないまま設備の導入や広告宣伝といった出費が発生する施策を進めてしまう可能性があります。知らず知らずのうちに大幅な赤字が発生すると、事業を畳まなければいけないことも。
今回のコラムでは、エステサロンの経営を安定させる上で欠かせない経理業務について詳しく解説していきます。帳簿の付け方や勘定科目の詳細、確定申告の流れもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
エステサロンで帳簿の記載が重要な理由
エステサロンにおける経理業務は、サロンを経営する中で発生した収支を帳簿に記録することから始まります。帳簿を記載することは以下2つの理由から非常に重要です。
- 経営状況を把握できる
- 効率良く節税できる
経営状況を把握できる
冒頭でもお伝えしたように、経理業務をおろそかにするとお金の出入りを把握できなくなります。財務状況を考慮することなくサロンの経営を進めると、良かれと思って実行した施策が経営を圧迫してしまうかもしれません。
例えば、資金繰りに余裕がないにも関わらず規模を拡大させようと大規模な広告宣伝を開始すると、思うように集客率が上がらないと巨額な広告費の支払いだけが発生します。良かれと思って実施した施策で赤字が膨らんでしまうことになれば本末転倒です。
帳簿を丁寧に記録することで収支を正しく把握して、資金の状況に合わせた適切な経営戦略を練ることができます。資金繰りに余裕がある時には積極的に設備投資を行う、利益が少ない期間には備品の購入代を削減できるよう対策を検討するといった方針の決定が可能です。
効率良く節税できる
- 備品・消耗品の購入費
- 家賃
- 広告宣伝費
- 人件費
- 水道光熱費
エステサロンを経営する中で発生する出費の中には、上記のように経費として計上できる項目が数多く存在します。こうした経費を正確に記録しておくと、確定申告の際に節税効果をアップさせることができます。
エステサロンの利益が大きくなればなるほど、支払うべき税金は多くなります。正しく経費を計上することで利益として確定申告する金額を減らし、納税額を抑えることが可能です。
帳簿を正しくつけることで、漏らすことなく経費計上できるため、節税効果を最大化させられます。
エステサロンにおける帳簿の付け方
エステサロンにおける帳簿は、以下のような手順で記録していきます。
- 日々の取引内容を補助簿に記載する
- 補助簿に記入した内容を時系列で仕訳帳にまとめる
- 仕訳帳の内容を勘定科目ごとにまとめて総勘定元帳に転記する
補助簿の内容を仕訳帳にまとめ、仕訳帳の内容をさらに総勘定元帳にまとめるというイメージです。総勘定元帳にまとめた内容は、確定申告の際に提出する青色申告決算書を記載する際に使用します。
エステサロンの帳簿に記載する仕訳・勘定科目
補助簿の内容を仕訳帳にまとめる際には時系列に並べるだけでなく、以下のように貸方と借方に分けて記載します。
- 貸方:資産の増加・負債の減少・資本の減少・費用の発生
- 借方:資産減少・負債の増加・資本の増加・収益の発生
総勘定元帳を記載する際に用いる勘定科目とは、支出の内容をわかりやすくまとめるための見出しのようなもののことです。一般的に、事業活動において発生した支出は大きく5つの項目に分類されます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 費用
- 収益
エステ機器の勘定科目と減価償却の考え方
エステサロンの支出を勘定科目で分類する際には、減価償却という考え方を頭に入れておく必要があります。
減価償却とは、長期間にわたって使用する高額な資産の購入代金をそれぞれ決められた年数に応じて1年ずつ分割し、経費計上することを指します。購入費用を分配する期間は耐用年数と呼ばれ、国によって定められています。
なお、美容機器やベッドは特に、メーカーが独自に耐用年数を設定していることも少なくありません。しかし、帳簿を付ける際には国が決めた耐用年数を使って計算しなければならない点に留意しておきましょう。
エステサロンでは、業務用エステ機器やベッドのように高額な備品を購入する機会が多いです。そのため、導入した設備に減価償却の考え方が適用されるかどうかを正しく判断することが求められます。
減価償却の考え方が適用される備品は減価償却費として耐用年数で分配し、適用されないものは消耗品費として一気に計上しましょう。減価償却費と消耗品費のどちらに分類されるかは以下のように判断します。
- 取得価格が10万円以上、かつ使用可能な期間が1年以上→減価償却費
- 取得価格に関わらず使用可能な期間が1年未満→消耗品費
エステサロンの確定申告について
サロン経営を通して発生した収支を総勘定元帳にまとめたら、その内容を元に確定申告を行います。確定申告は1年間で一定以上の利益が発生した場合に必ず実施しなければならず、大きく以下の2つに分けられます。
- 青色申告
- 白色申告
青色申告
青色申告では事前に税務署へ申請書を提出した上で、白色申告に比べてより厳密に帳簿を作成することが求められます。ただし、以下のようなメリットがあることから、個人事業主として事業を展開するのであれば青色申告を選択する方がベターです。
- 最大65万円の特別控除が適用される
- 赤字を3年間まで繰り越しできる
- 家族への給料を経費として計上できる
- 30万円未満の固定資産を全額経費として計上できる
赤字を繰り越すと、翌年に所得として申告する金額を減らして節税することに繋がります。具体的には、30万円の赤字があった翌年に100万円の黒字が出た場合、繰り越した30万円の赤字と合算して70万円の利益として申告できるという仕組みです。
白色申告
白色申告は事前の申告が不要なだけでなく、青色申告に比べて手続きがシンプルです。その一方で、青色申告を選ぶことで受けられる先述したような控除が適用されません。
手続きが煩雑になるものの、できる限り多く節税したいと考えるのであれば青色申告を選択する方がおすすめです。
エステサロンの経理を学ぶ方法
エステサロンの開業を検討しているものの、ビジネスをスムーズに進める上で必要な経理に関する知識は網羅できていないという方は多いのではないでしょうか。
経理業務に行き詰まって他の仕事に支障が出ないよう、事前に以下のような方法で最低限の知識を身に付けておくべきです。
- 経理に関係するセミナーやスクールに参加する
- 経理に関する参考書を読む
- インターネットやeラーニングの通信講座で学ぶ
- 資格を取得する
エステサロンの経理業務を行う上で役に立つ資格としては、以下の3つが挙げられます。
- 日商簿記
- PASS(経理事務パスポート検定)
- FASS(経理・財務スキル検定)
資格の勉強は経理に関して一定レベルの知識を身に付ける良い機会となる一方で、場合によっては取得するのにかなりの金額や労力が必要になることもあります。
経理の勉強に時間を使いすぎてしまい、エステサロンの開業に向けた準備がおろそかになってしまっては意味がありません。経理の勉強に十分な時間を確保できないのであれば、資格の取得よりも実務で使える最低限の知識を身に付けることを優先させましょう。
経理業務はエステサロンの経営に欠かせない
エステサロンの経営をスムーズに進め、財務状況に応じた適切な経営戦略を打ち出していくためには、正確な経理業務が欠かせません。
法人サロンであれば専任の担当者に依頼することもできますが、個人で経営するエステサロンではオーナーが経理業務を担わなければならないことがほとんどです。
今回ご紹介してきた業務を多忙なサロンワークと同時に進めていくためには、経理に関する知識を身に付けてある程度業務に慣れておくことが欠かせません。開業を検討する段階で事前に最低限の知識を習得しておけると良いでしょう。