美容意識が特別高くない方でも脱毛をすることが一般化してきている昨今、脱毛サロンを開業しようとしている方は増えてきています。
「サロン開業=儲かる」というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、実は短期間で閉業に追い込まれてしまうケースが少なくありません。
理由は、様々ですが売上の伸び悩みや集客が上手くいかないこと等が、よくある理由として挙げられます。
というわけで今回は、サロン開業を成功させるために意識すべき経営上の重要ポイントについてご紹介します。
対処法も併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
独立開業の成功率はかなり低い?要因は?
一般的に個人事業の10年後生存率は10%程度と言われています。
個人事業主や中小企業の経営資源は限られており、その中で適切な資源配分を行い、他社との差別化を図ることができなければ、長きにわたる発展を手に入れることは非常に難易度が高いと言えるでしょう。
美容・脱毛業界の現状を見ると、近年では業務用脱毛機の性能向上や操作性の改善によって、特定のスキルや経験が無くても開業ができるサービスとして、脱毛エステへの市場参入を考える方は増えてきています。
参入ハードルが低い分、競合度が非常に高い業界となりつつあり、他社との明確な差別化を行い独自のブランド形成ができなければ売上アップや経営の成功は難しくなってきています。
サロン経営を行う上で、経営者の方がつまずく主なポイントとしては以下のことが挙げられます。
- サービス品質が低い
- 資金管理ができていない
- 集客施策が弱い
- 経営関連知識や組織管理知識が不足している
それぞれのポイントについて、対処法と一緒に解説していきます。
ポイント①サービス品質が低い
当たり前ではありますが、サービス品質の低い脱毛サロンに顧客は集まりません。
ただ、一口に「サービス品質が低い」と言っても、その要因は様々な事象が絡み合った複雑なものである場合が多いです。
どんな要因がサービス品質の低下をもたらしているのか現状把握から始めて、1つ1つの問題に向き合っていきましょう。
脱毛サロンにおけるよくある「サービス品質の低い状態」とは、具体的には下記のような状態を差します。
- 施術を受けても脱毛効果を感じられない
- スタッフの対応に誠意が感じられない
- 顧客の期待する以上のサービス体験を提供できていない
サービスの品質が悪いと、せっかく獲得した新規顧客もすぐに他サロンへと逃げて行ってしまい、今後の売上拡大において大きなハードルとなってしまいます。
また、それだけでなく、もし獲得した新規顧客に悪い印象を与えてしまい口コミサイトやSNSに悪い評判を書き込みをされてしまうと、今後の新規顧客の集客にも悪影響を与える可能性もあります。
そんな事態に陥らないためにも、以下のような対処で問題解決を図りましょう。
対処法①導入している脱毛マシンを見直す
「顧客が施術効果を実感できない」という状態の場合、原因は、
- 機械のメンテナンスが行き届いていない
- そもそも機械の性能が低い
という理由であることが多いです。
①機械のメンテナンスが行き届いていない
昨今は各社から高性能な業務用脱毛機が多数発売されていますが、どんな脱毛機も適切な方法で使用しなければ最大限の効果を得ることができません。
業務用脱毛機は定期的にランプ交換を行わなければ、性能が低下していってしまいます。
各メーカーの案内する方法で、定期的なメンテンナンスを確実に行いましょう。
②機械の性能が低い
そもそも使っている業務用脱毛機の性能が低いという可能性も考えられます。
購入してから後悔しないためにも、業務用脱毛機選びに悩んだ場合はまずは複数の企業にお問い合わせをとって、無料デモ体験などを行って複数製品を自分の目で見て・手に取って感じ取ることが重要です。
インターネットで調べただけではわからない、機械の大きさや使用感を体験することで、後悔のない機械選びが可能になります。
もし可能であれば、気になる脱毛機を導入している店舗で実際に脱毛施術を受けることで、より機械購入の失敗確率を下げることができるでしょう。
対処法②顧客教育を意識したサービス提供を行う
顧客が「脱毛」について理解していない故に、不満を持たれてしまうこともよくあります。
脱毛施術は数カ月かけて複数回施術を行うことが一般的で、効果を実感するまでにある程度時間がかかります。
このことについて十分な理解を顧客から得られないままサービス提供を続けていると、短期的な効果だけを気にする顧客が不満を持ってしまうケースが頻発します。
また、施術の効果を最大限に引き出すためには、施術後のスキンケアも重要な要素の1つになります。化粧水や乳液での保湿・スキンケアをしっかりと行うように、スタッフから顧客へお伝えすること大切です。
このように、顧客満足度を高めるためには顧客の教育も必須になります。
対処法③スタッフの接客レベルを引き上げる
どんなに施術効果の高い脱毛サロンでも、スタッフの働く態度が悪くては満足度が低くなってしまいます。
脱毛に来るお客様(特に脱毛経験が少ないお客様)は、自分の肌に機械を当てるということに対して少なからず不安をいただいている方が多いです。
オーナー自ら施術する場合でも、雇用しているスタッフが施術する場合でも、お客様の不安に寄り添ったコミュニケーションを取り、顧客満足度の向上に努めましょう。
また、スタッフによってサービスの質に差があるのも好ましい状況ではありません。
例えば、「接客レベルの高いスタッフ」と「普通レベルのスタッフ」の2人がいる場合、1度でも「接客レベルの高いスタッフ」から施術を受けた顧客は、今後「普通レベルのスタッフ」の施術に対して不満を抱くようになっていきます。
これは、「期待しているレベルよりも上か下か」で顧客はサービスの満足度を判断するためです。
1度でも「接客レベルの高いスタッフ」から施術を受けると、その顧客の期待レベルが一気に引き上がることによって、通常の接客では満足できなくなるのです。
教育マニュアルや接客マニュアルを作成するなどして、スタッフのレベルを一定に保つための教育制度を構築するようにしましょう。
対処法④内装や備品などの空間演出にこだわる
空間演出については、「施術効果」や「スタッフの接客」よりは重要ではありませんが、お客様のさらなる満足度向上を目指すのであればこだわっておきたいポイントの1つです。
サロンのコンセプトに併せた内装品の統一(例えば、高級志向の脱毛サロンを運営しているのであれば、モノトーン基調のシンプルで高級感のある内装にする)などを行うことで、さらなる顧客の満足度アップが可能になります。
- BGM
- 匂い
- 備品・内装品
- 照明
- 施術室に貼ってあるポスターのデザイン
など、顧客の受け取る情報すべてがサロンの評価を左右する一因となります。
細かな部分にあまりこだわりすぎると余計な費用が掛かってしまい、逆にサロンの収益性を下げる要因となってしまいますが、ある程度は空間演出にも気を配ったサロンづくりがおすすめです。
ポイント②資金管理ができていない
脱毛サロンを開業する上で必要なのが、初期費用とランニングコストです。
開業前に初期費用を準備しておくことはもちろんですが、開業後の運転資金のことも考えておかなければ徐々に経営が苦しくなってしまいます。
脱毛サロン運営に必要な費用としては、具体的には下記のものがあります。
- 脱毛機の購入費
- 脱毛機のメンテナンス費
- 物件費(家賃・敷金・礼金・仲介手数料)
- 内装工事費
- 人件費
- 広告費
- 設備・備品費
- 消耗品費
- 商品仕入れ原価(物販を行う場合)
「脱毛機の購入費」、「物件費(敷金・礼金・仲介手数料)」、「内装工事費」、などが主な初期費用で、その他に定期的に必要になる費用がランニングコストになります。
「このくらいの資金確保があれば大丈夫だろう」というどんぶり勘定の経営を行っていると、想定以上にランニングコストが膨らんだ際にキャッシュ不足に陥いってしまうことがよくあります。
仮に決算書上は黒字になっていたとしても、金融機関から借り入れを行っている場合は借入金の支払期限までに借金を返却できなければ、それだけで倒産してしまうこともあり得ます。
実際、倒産企業のうち黒字倒産は全体の3割にも上ると言われています。
手元資金の管理ができていないと黒字倒産してしまうことも十分にあり得るため、どんぶり勘定は非常に危険です。
資金ショートが起きないようにするためには以下の点に注意しましょう。
対処法①予算計画の定期的な見直し
「予算計画をあらかじめ立て、その計画を数カ月毎に振り返る」ことが適切な資金管理を行う上で非常に重要になります。
予算計画を立てていないと、例えば「経費を使いすぎている」、「使った広告費に対して売上が低い」、などの問題点に気が付けない可能性が高まります。
そして、原因がよくわからないまま手元資金がどんどん減少していくという事態に陥ります。
状況を正確に把握すれば、「経費を削減する」、「広告媒体を見直す」、「顧客単価を上げるためのメニューを見直す」、「顧客数を増やすための取り組みを強化する」など様々な対処が可能になります。
対処法②補助金・給付金などで資金注入する
資金繰りが厳しいという場合には、国や地方自治体、日本政策金融公庫、中小企業基盤整備機構など様々な組織・団体が、創業や経営にかかわる低利融資制度・支援金制度を準備しています。
中小企業向けの補助金・給付金制度については「J-Net21」という、中小企業基盤整備機構が運営するポータルサイトにて紹介されています。気になる方は確認してみてください。
ほとんどの補助金制度は、国や自治体などで定められた一定の基準をクリアしたり、審査に通る必要がありますので、誰でも融資を受けられるわけではありませんが、日ごろから情報をチェックしておくことをおすすめします。
ポイント③集客施策が弱い
開業したばかりの脱毛サロンは大手チェーン脱毛サロンと比較すると、知名度・信用度ともにとても低い状態です。
開業後間もないサロンは、ただお客さんを待っているだけでは顧客数を増やしていくことはできません。
知名度・信頼度の高い大手サロンと比較した際に、「わざわざ小規模な個人サロンに行く理由」を顧客に明確に実感してもらう必要があります。
チラシのポスティング、新聞折込広告、SNSの運用など、多くのサロンが集客のための施策を実施していますが、「なんとなく周りがやっているから」という理由でそのような施策を実施しても数ある競合サロンの中に埋もれてしまいます。
集客を強化するためには、行き当たりばったりの集客施策ではなく、サロンの強みをターゲット層にしっかりと届けるための明確な集客戦略が必要になります。
集客施策を行う際には、下記の点に注意するようにしましょう。
対処法①強みを訴求できる広告物を作成する
チラシやポスター制作、ホームページやSNS、インターネット広告など、潜在顧客にアプローチする方法はたくさんありますが、どんな広告手法を利用するにしても、大切なのは広告物の内容そのものです。
明確に顧客にサロンの魅力が伝わる広告物を作成しなければ、わざわざ開業したばかりのサロンに通う決断をしてもらうことはできません。
強みや伝えたいことを明確化しておきましょう。
広告物制作の際に注意すべきことは、情報の盛り込み過ぎです。
オーナーの方にとっては、愛着が強い自分のサロンのアピールポイントはたくさん思い浮かぶと思いますが、情報を詰め込みすぎた広告物は読み手が見たいポイントを見つけにくい広告物となってしまい、本当に一番伝えたいポイントが伝わらなくなってしまいます。
受け取り手視点に立った広告物制作を行うようにしましょう。
対処法②インターネットを活用して低予算で集客を行う
集客がいくら重要と言っても、資金が限られている開業直後のサロンにとって販促活動に予算を割くことは簡単なことではありません。
しかし、そんな中でも認知を広げるための活動は続けていかなければ、売上向上も見込めません。
このように、集客の予算確保に悩んでいる場合は、インターネットを活用した集客活動がおすすめです。
近年では、低予算でWeb広告を運用したり、SNSやYouTubeを使用した認知拡大活動ができたりすることで、昔と比較すれば小規模なサロンでも顧客を獲得するためのハードルは下がってきています。
インターネットを使った集客促進は、誰でも気軽に始められることが特徴なので、まずはSNSアカウントの運用など、簡単なことから始めてみてはいかがでしょうか?
ポイント④経営知識や組織管理知識が不足している
脱毛サロン開業を成功させるためには、ただ満足度の高い脱毛サービスを顧客に提供するだけではなく、経営全般に関する知識が必要になります。
経営に関する知識といってもかなり幅が広く、
- 会社経営に関連する法務知識
- 税務、財務会計関連の知識
- 人事・組織に関する知識
- マーケティング・ブランディングに関する知識
- 生産性・品質管理に関する知識
などの知識が必要になります。
特に法務・税務関連領域においては、知識不足で何らかの法律違反などを行った場合、罰則を受けたり重加算税・延滞税を徴収されたりなどのリスクも伴います。
高いアンテナをもって情報収集に努める必要ようにしましょう。
対処法①専門家の力を借りる
開業当初はわからないことばかりなのは当たり前です。
特に、法律や税金関連の事柄は知らない用語もたくさんあり、慣れるまではかなり勉強に苦労する経営者の方が多いです。
開業当初は、管轄の税務署などに行って無料相談にのってもらうのもおすすめです。
ある程度、安定的な売上が立つようになりスタッフの雇用なども始めたら、税理士や会計士、社労士など士業の方の力を借りるのも1つの手でしょう。また、集客や販促に関しても、マーケティング会社やブランディング会社から支援受けるのもよいでしょう。
ただ、そのようなプロの手を借りるとどうしても費用がかさむので、開業したての個人サロンにはハードルが高いことは否めません。
対処法②書籍やセミナーを通して自ら情報を取りに行く
経営者向けの書籍やセミナーを通して自ら情報を取りに行くのは、最も低予算で知識を身に着けられる方法といえるでしょう。最近では、難しい専門情報をYouTubeなどで詳しく解説している方もたくさんいらっしゃいます。
自ら情報収集を行い、エステティシャンとしてだけでなく経営者としての成長も追いかけることが大切です。
まとめ
サロン開業を成功させるためには、数ある競合の中でも独自の強みを打ち出し、顧客にしっかりと価値伝達を行うことが必須になります。
獲得した顧客をファン化させることができれば、安定的な経営体制を構築でき今後の永続的な発展につながります。
今回解説した重要なポイントを、しっかり意識したサロン経営を行っていきましょう。