「独立して自分のお店を持ちたい」と考えるエステティシャンは多いでしょう。自分自身がオーナーとなれば、大きなやりがいを持って仕事ができる上、お店づくりについても自由に決められます。
しかし、心配なのは収入面です。周りに尋ねてみると、独立して収入が増えたという方もいれば、失敗してすぐに廃業してしまったという方もいます。
そこで今回の記事ではエステサロンの開業は本当に儲かるのかどうか、儲かるためにはどうすれば良いのかということを詳しく解説していきます。
本当に儲かる?リアルなサロン経営事情
実際のところ、エステサロンの開業は儲かるのでしょうか。
長く美容業界に携わっていると、知り合いが独立したという話を聞くことも多くなりますが、決して成功例だけではありません。そのことから、やはりサロン開業は簡単ではないことがわかります。
ちなみに、新しくできたエステサロンのうち1年以内に半数が、3年以内に90%が廃業してしまうというデータがあります。直近の市場規模もやや下がり気味で、業界的にも向かい風が吹いている状況といえるでしょう。
エステサロンの黒字化にはどれくらいかかる?
ケースバイケースですが、ほとんどのエステサロンは開業してすぐに黒字になるわけではありません。姉妹店やFC加盟店としてオープンするのであればともかく、全く知名度がない状態からいきなり黒字でスタートできるのは稀なケースでしょう。
あくまで参考程度ですが、サロン経営を黒字化するまでに早くても半年程度はかかるものと捉えておきましょう。
中には2〜3年経過してようやく売上が安定するようになったお店もあるため、ある程度余裕を持ってスタートできる運転資金を用意することが望ましいです。
サロンオーナーの平均年収はどれくらい?
次にリアルな年収について解説していきます。
こちらもあくまで参考として知っておいていただきたいのですが、一般的なサロンオーナーの年収は300万〜1,000万円程度。非常に幅広く、結局お店によって全く異なりますが、中でも400万〜500万円に収まるケースが比較的多いです。
ただし、これらはある程度売上が安定しているエステサロンに限ります。前述の通り、黒字化するだけでも容易ではないため、これから開業する場合、まずはそこを目指すと良いでしょう。
大幅な年収アップには店舗拡大が必須
都心部などでは年収1,000万円を超えるサロンオーナーも少なくありませんが、そのように大幅に年収を上げたい場合には店舗拡大が必須です。
エステサロンも根本的には接客業であるため、スタッフ1人が生み出せる利益には限界があります。そのため、多額の利益を得るには複数のエステサロンを経営し、相応の人数のスタッフを雇用しなければいけません。
しかし、店舗を拡大していくとどうしても自分の目が届かない領域が出てきます。管理者を育成しつつ、オーナーがいなくても自動的に利益が生まれる仕組みを形成する必要があるため、捉えようによっては開業するよりハードルが高いでしょう。
儲かるエステサロンの共通点
サロン開業を成功させるにはどのような条件を満たせばいいのでしょうか。儲かるエステサロンのよくある共通点を紹介するので、参考にしてみてください。
- リピート率が高く安定している
- サービスを安売りしない
- 物販に力を入れている
- 常にトレンドを追っている
- 明確な売上目標を掲げている
- スタッフの離職率が低い
リピート率が高く安定している
高い利益率を誇るエステサロンは、必ずといっても過言ではないほど、リピート率が高く安定しています。
例えば、チラシや広告にコストをかけているエステサロンは多いですが、これらは基本的に新規のお客様を増やすために行うことですよね。しかし、常に高いリピート率を維持し、それで十分な利益を得ているのであれば、広告に余計なコストをかける必要はありません。
結果としてランニングコストが抑えられ、利益率が高くなります。
サービスを安売りしない
現在の美容業界は非常に競争が激しく、人通りが多い駅の周辺などは何店舗ものエステサロンがあったりします。そのような競争に打ち勝つために料金を値下げするケースが見受けられますが、あまり得策とはいえません。
仮に料金を下げることでお客様が増えたとしても、利益率が下がってしまいます。毎日忙しなく働いているにも関わらず、少々の売上しか出ないという悪循環に陥る恐れもあるでしょう。
また、安さにつられて来店するお客様はもっと安いお店ができた時、そちらに移ってしまう可能性が高いです。そのため、後々のことを考えると安易に値下げし、サービスを安売りすることは控えるべきでしょう。
物販に力を入れている
利益率が高いエステサロンは、普段の施術だけでなく、物販にも力を入れている傾向にあります。どのような商品を販売するかは、サービスとの相性も加味して選定する必要があるものの、本当にお客様に必要な商品であれば、購入してもらうハードルは高くありません。
失敗すると大量の在庫を抱えることになってしまうため、導入は慎重に行うべきですが、上手くいけばほとんど人件費をかけずに売上を伸ばすことができます。
常にトレンドを追っている
エステに限らず、美容業界はトレンドの移り変わりが非常に早い世界です。インフルエンサーの一言によって新しい波が生まれることも珍しくありません。
そのようなトレンドを常に追っていくことは大変ですが、その分チャンスでもあります。海外で流行っているような最新のメニューをいち早く取り入れることができれば、他店との差別化にもなるでしょう。
明確な売上目標を掲げている
ビジネスを成功させる人は明確な目標を掲げています。エステサロンも例外ではなく、最初に売上目標を決めて、そこから何をどうすべきか逆算していくべきです。
ただ、そのような売上目標はオーナーだけが把握していても意味がありません。スタッフにも目標を浸透させ、お店全体で目標に向かっていってからこそ成果に繋がります。
スタッフの離職率が低い
大手のチェーン店であればともかく、そうでないエステサロンでは各々のスタッフにファンがついていることが非常に多いです。つまり、スタッフが辞めればファンであるお客様も離れ、お店の売上にもダイレクトに影響を与えます。
逆にいえば、スタッフの離職率が低いエステサロンはそういった顧客離れが起きづらく、安定して売上が伸びていきやすいということになります。
エステサロンにおける重要な経営指標
ちなみにエステサロンを経営するにはどのような数字に着目すれば良いのでしょうか。既にお店を経営している方にとっては当たり前のことかもしれませんが、これから開業する方にとってはそうでないかもしれないので、一つひとつ解説していきます。
- 新規来店数
- リピート率
- 顧客単価
- 時間単価
- 原価率
新規来店数
エステサロンを開業したばかりの頃はひとまず新規来店数を伸ばすことに尽力しましょう。
どれだけ施術や接客に自信があっても、実際にお客様に体験してもらえないことには意味がありません。特に最初はお客様にお店の存在を認知してもらうだけでも一苦労なので、広告やチラシ、SNSなどを駆使して、1人でも多くのお客様に来店してもらうことが大切です。
リピート率
ある程度集客のシステムを確立し、継続的に新規のお客様が来店するようになったら、今度はリピート率にも着目しましょう。
新規のお客様と比較して、リピーターは集客コストが圧倒的に低いというメリットがあります。熱心なファンをたくさん獲得できれば、余計なコストをかけずに安定した売上を獲得できるので、ある意味来店数よりも重要な指標といえます。
仮にリピート率が低いと、継続的に集客活動を行わなければいけません。「お客様に満足してもらえていない」ということの裏返しでもあるので、常に気にしていくべき指標です。
顧客単価
簡潔に説明すると、エステサロンの売上は「来店数 × 顧客単価」で決まります。そのため、顧客単価も新規顧客やリピーターと等しく重要な指標です。
先ほど、儲かるエステサロンの特徴の1つとして「サービスを安売りしない」とお伝えしましたが、その理由こそが顧客単価を下げることに他なりません。とはいえ、顧客単価はただ値上げすれば良いというほど単純なものではないため、
- サブメニューを用意する
- 物販を薦める
など、顧客層に合った方法を考える必要があります。
時間単価
よく注目されるのは顧客単価ですが、時間単価も無視してはいけません。回転率と言い換えることもできますが、仮に同じ金額のサービスでも、施術時間が1時間のものと30分のものを比べると、予約数も倍の差があることになりますよね。
- 美容院
- ネイルサロン
- 脱毛サロン
例えば上記のようなサロンの場合、お客様も「同じ仕上がりであれば早く終わる方が嬉しい」という意見の方は多いです。そういった理由から、サービス内容によっては顧客単価より時間単価を重視すべきということもあるでしょう。
原価
最後に着目すべきなのは原価、つまり、エステサロンを経営する上でどれほどのコストがかかっているかということです。
飲食店などとは違い、エステサロンの経営にかかる原価の項目数はそこまで多くありませんが、それでも日頃からきちんと計算しておくべきでしょう。少しの工夫でコストを抑えられる項目もあり、普段から気を付けておくことで改善点を発見しやすくなります。
エステサロンにおける原価とは
ちなみにエステサロンの経営で発生する原価としては以下のようなコストが挙げられます。
- 消耗品
- 家賃
- 水道光熱費
- 人件費
- 広告宣伝費
消耗品
まずは消耗品です。具体的にどのような消耗品が発生するかはサービスによって異なりますが、頻繁に消費するものほど余計なコストをかけないよう気を付けましょう。
しかし、お客様が直接触れる、あるいは目に入るものがあまりにチープだと、満足度を下げる要因にもなりかねません。こだわるところはこだわり、そうでない部分はしっかり削ることが重要です。
家賃
事業用マンションやテナントで開業する場合、大きな固定費となるのが家賃です。良い立地であるほど集客効果が期待できますが、その分家賃は高くなります。
駅からの距離や交通量、自身の予算などを踏まえ、バランスの良い物件を見極めましょう。
水道光熱費
固定費に対して、支払う額が月によって少なからず変わるコストを変動費と呼びます。
代表的なのは水道光熱費ですが、固定費と比較して、このような変動費は工夫次第で節約しやすいという特徴があります。1ヶ月あたりの料金は微々たるものでも、長期間積み重なれば大きな差が生まれるので、無駄がないか定期的に見直すことを心掛けてください。
人件費
オーナーが1人で運営する個人サロンを除けば、恐らく人件費が最大の原価となるでしょう。正社員の場合、直接支払う給与以外に、各種手当や社会保険等を合わせると、1人あたり約40万円の人件費が発生します。
それなりのベッド数を想定するのであれば、スタッフの雇用は必須ですが、もし集客が上手くいかずにスタッフを持て余すようなことがあれば大きなマイナスです。
広告宣伝費
開業当初から一定の来店数を獲得するには広告宣伝が欠かせませんが、当然相応のコストがかかります。Web広告などは少額でも広告を出稿できるというメリットがあるものの、現実的にはある程度まとまった金額が必要になるでしょう。
加えて、広告の効果はあくまで一時的なものです。
場合によっては開業後も毎月数万〜数十万円の広告宣伝費をかけ続けなければならないということも考えられます。そのような事態を回避するためにもリピート率の向上に努めましょう。
エステ開業を失敗しないためのポイント
最後に、これまでのことを踏まえた上でどのような点に気を付けるべきなのかをお伝えしていきます。せっかく立ち上げた自分のお店を長く続けるために、以下の点を押さえておきましょう。
- 初期費用を極力抑える
- FC加盟を検討する
- 美容機器の導入は慎重に
- メーカーの開業・経営支援を活用する
初期費用を極力抑える
今回の冒頭でもお伝えした通り、開業からわずか数年以内にほとんどのエステサロンが廃業しています。理由は様々ですが、中には利益が黒字化する前に運転資金が尽きてしまったというケースが少なくありません。
そのため、開業時の初期費用は極力抑え、その分運転資金に回しましょう。必須でない備品などは後から買い足しても問題ありません。
フランチャイズ加盟を検討する
エステティシャンとしての技術には自信があっても、経営に関する知識を持ち合わせていないという方にはフランチャイズに加盟することを検討するのも良いでしょう。
加盟金やロイヤリティなどを支払う必要がありますが、その企業が持つノウハウを伝えてもらったり、知名度を活用することができます。起業経験がない方が自力で開業するより、失敗するリスクは低いといえるでしょう。
美容機器の導入は慎重に
エステサロンにはエステティシャンが素手で施術するハンドエステと、業務用美容機器を使用するマシンエステに分かれます。
それぞれメリットとデメリットがありますが、もし業務用美容機器を導入する際は慎重に選んでください。現在のマシンは1台数百万円と非常に高額ですが、機種によって性能は全く異なります。
マシンの性能はお客様の満足度、ひいてはリピート率に直結するため、展示会やデモ体験などで必ず実機に触れ、最も良いと思ったマシンを選んでください。
メーカーの開業・経営支援を活用する
業務用美容機器を購入した際のアフターサポートの内容はメーカーによって異なりますが、中にはマシンの使い方だけでなく、開業・経営支援を行っていることもあります。
例えば、弊社NBSの場合は美容機器メーカーとしてだけでなく、実際のサロン運営で培ってきたノウハウを活かし、マシン購入後もお客様をしっかりサポートします。
業務ですぐに使える同意書やカウンセリングシートも用意しているため、最短経路でエステサロンをオープンしていただけます。
サロン開業で儲けるにはそれなりの準備が必要
文中でお伝えした通り、エステサロンオーナーの年収はお店によって全く異なります。成功して多額の利益を獲得するどころか、全くお客様が寄り付かず、失敗に終わったという例も決して少なくないのが現実です。
そのため、オープン前の準備期間から念入りに計画を練りましょう。十分な資金を蓄えるほか、ランニングコストと見込み売上のバランスを緻密に計算し、万全の状態で開業することが第一ステップです。
そしてご存知の通り、美容業界は非常に競争が激しい世界です。一時的に人気店になったとしても新しい競合が出てくる可能性は十分にあります。開業後もお客様に寄り添うことを忘れず、経営改善に努めていってください。