美容院やサロンで管理しているカルテには、お客様の個人情報や施術履歴といった重要な情報が多く掲載されています。以前はカルテを紙で管理するのが一般的でしたが、近年は、電子カルテを導入するケースが増えています。
今回のコラムでは、美容系サロンが電子カルテを導入するメリット、デメリットを解説していきます。カルテで管理する情報を接客やサービスに活かす方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
美容業界に浸透しつつある電子カルテ
かつては、美容業界においてカルテは紙で管理するのが当たり前でした。しかし、紙カルテには「保管用のスペースを確保しなければならない」、「閲覧したいカルテを探すのに時間がかかる」といった不便な点が多くありました。
電子カルテが誕生すると、1990年代後半に医療現場で、2000年代に入ると美容業界で本格的に導入され始めました。近年は、美容系サロン全般で急速に普及しています。
サロンにおける電子カルテの5つのメリット
美容院やサロンにおいて、電子カルテを用いて顧客情報を管理するメリットは以下の5つです。
- 施術前後の写真を保存できる
- 必要な情報を見つけやすい
- 保管場所を取らない
- スタッフ間の情報共有がスムーズになる
- 情報管理の正確性が向上する
施術前後の写真を保存できる
電子カルテがあれば、過去に撮影した施術部位の写真を保存しておくことができます。施術前後の状態を撮影してお客様に見比べてもらうと、効果をより強く実感してもらえるため、施術に対する満足度が高まりやすいでしょう。
また、スタッフが過去に施術した際の写真を振り返ることで、施術スキルの成長を確認することも可能です。
必要な情報を見つけやすい
紙のカルテは、お客様1人につき1つの冊子で管理されていることがほとんどです。そのため、予約を受ける、問い合わせに対応する際に迅速な対応ができません。
電子カルテであれば、お客様の氏名を検索するだけで、対象のカルテをすぐに閲覧することができます。カルテを探す時間が短縮されると、ただ業務を効率化できるだけでなく、お客様を待たせる時間を減らせます。
保管場所を取らない
お客様が最後に来店した日から5年間は、カルテを保存しておくことが法律で義務付けられています。紙のカルテを管理しながら経営しているサロンでは、新規のお客様が来店するたびに冊子の数が増えるため、膨大な保管スペースが必要です。
電子カルテの場合、多くのお客様の情報を1台の端末で管理できるため、カルテの収納スペースを確保する必要がありません。さらに、追加で紙を購入するコストを削減することも可能です。
スタッフ間の情報共有がスムーズになる
複数の端末で閲覧できる電子カルテがあれば、お客様の情報を同時にスタッフ間で共有することができます。お客様の指名やスタッフの休憩によって担当するスタッフが交代する時でも、迅速に共有事項を把握して施術を進められるでしょう。
また、系列のサロン間で過去の施術履歴を確認しておくことも可能です。普段別の店舗に通っているお客様が系列店で予約をした場合でも、顧客情報を簡単に引き継いでスムーズな対応に繋げられます。
情報管理の正確性が向上する
紙のカルテには、紛失したり劣化したりするリスクがあります。
しかし、電子カルテの場合、端末を確実に管理すれば紛失や劣化のリスクは軽減されます。また、記入漏れを自動でチェックして通知してくれる機能が搭載されたタイプもあり、記入漏れなどのミスを防げるでしょう。
電子カルテを導入するデメリット
ここからは、電子カルテを導入する上でのデメリットをご紹介します。
通信状態に影響される
情報を得るまでのスピード感が魅力の電子カルテですが、稼働速度はネットワークの通信状況に大きく依存しています。そのため、店内の通信状況に不備が生じると、カルテを閲覧できなくなってしまうことがあります。
カルテの不具合で待ち時間が発生しないように、安定したネットワーク環境を整備しておくと良いでしょう。また、代わりに使用できる紙を常備したり、対応マニュアルを作成しておくと安心です。
セキュリティの整備が必要になる
電子カルテでは、住所や生年月日など、お客様の大切な個人情報を一括で管理しています。情報が外部に流出するリスクがあることを念頭に置かなければなりません。
「美容サロンを運営する会社が誤って1万人以上の個人情報をインターネット上で公開してしまう」という事例も実際に発生しています。
パスワードを設定したりスタッフに情報漏洩のリスクを周知したりすることで、セキュリティ体制を万全に整え、情報を適切に管理しましょう。
電子カルテを選ぶ際のポイントとは
導入する電子カルテを選ぶ際には、以下の4点に注意しましょう。
- 手描きしやすい端末で使えるか
- 複数の端末で同時に見られるか
- 項目をカスタマイズできるか
- 他のシステムと連動しているか
手描きしやすい端末で使えるか
ペンツールを用いた書き込みに対応している電子カルテを選ぶと、紙カルテと同じように、お客様の話を聞きながら手書きでイラストや図を書き込むことができます。
画像の上から矢印をつけたり施術箇所を囲ったりできれば、お客様への説明に具体性を持たせられるでしょう。
複数の端末で同時に見られるか
施術スペースの多いサロンの場合、2人以上のお客様を同時に対応することも多くあります。同時にアクセスできる電子カルテを選び、複数台の端末を用意しておくと、複数のお客様が一気に来店してもスムーズに対応することができるでしょう。
項目をカスタマイズできるか
電子カルテのフォーマットにない項目を繰り返しキーボードで入力していると、非常に手間がかかってしまいます。入力する項目を自由にカスタマイズできる電子カルテを選ぶと、効率良く情報をまとめることができるでしょう。
他のシステムと連動しているか
- 予約の受付
- 売上管理
- POSレジ
- 物販の在庫管理
- 同意書
上記に示すように、美容業界では電子カルテ以外もペーパーレス化が進んでいます。しかし、別々のシステムを利用していると使い分けが難しく、かえって作業が煩雑になるかもしれません。
他のシステムと連動している電子カルテを導入することで、複数の業務を同じシステムで実施でき、サロンの業務全体を効率良く進められます。
顧客満足度を高めるカルテ活用術
ここからは、顧客満足度を高めるためのカルテの活用術をご紹介します。
お客様のニーズに沿った接客や施術を行う
- 施術前にヒアリングした不安や要望
- 接客時の気付き
- 施術中の会話を希望するかどうか
- 実際の施術内容
- 施術の仕上がりに対するお客様の反応
上記のような情報を、できる限り詳細に記録しておきましょう。お客様の細かいニーズに合わせて、より満足度の高い接客や施術を提供することができます。
例えば、施術中静かに過ごすことを希望するお客様には必要以上に話しかけない、前回お客様の反応が良かったメニューをおすすめするといった対応が可能です。
お客様とのコミュニケーションに役立てる
施術中や接客中の会話内容を詳細に記録しておくと、お客様とのコミュニケーションのきっかけにすることができます。
- 「おすすめしていただいたドラマを見ました」
- 「先日話していた旅行はいかがでしたか?」
上記のような声掛けをすると、お客様が「自分との会話を覚えてくれていた」と感じ、スタッフに親近感を抱いてくれるため、サロンに対する信頼度が高まるでしょう。
リピーターの増加に繋げる
カルテに保存されている履歴から来店頻度がわかるため、お客様が再来店を検討する時期を大まかに推測することができます。お客様の来店意欲が高まるタイミングでキャンペーンや新メニューを告知し、訴求効果をアップさせることが可能です。
また、生年月日をもとにバースデーカードを送付したり、初来店記念日に感謝のメッセージを送付したりするのもおすすめです。
お客様を大切にしているという気持ちを表現し、また来店したいと思ってもらえるのが理想です。
電子カルテを活用して円滑なサロン経営を
サロンに電子カルテを導入すると、お客様の情報を正確に、かつ安全に管理し、業務を効率化させることができます。今回ご紹介したポイントを踏まえて電子カルテを活用すれば、お客様に提供するサービスの質を高められるでしょう。
この機会に自分のサロンに合った電子カルテを取り入れて、円滑なサロン経営に役立ててみてはいかがでしょうか。