資格がなくても手軽に開業できる脱毛サロンですが、施術時にお客様を傷つけてしまう、電気系統のトラブルで営業できなくなってしまうといったリスクが伴うのも事実です。万が一の事態に備えるためには、保険に加入することが欠かせません。
そこで、今回のコラムでは、脱毛サロンに携わる方にぜひ知っておいてほしい「保険」について詳しく解説していきます。
脱毛サロンで起こり得るトラブルとは
脱毛サロンを経営していると、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 施術によるトラブル
- お客様の所持品に関するトラブル
- 物販によるトラブル
- サロンの設備が原因のトラブル
- 違法行為・無許可の施術によるトラブル
施術によるトラブル
脱毛サロンでは、脱毛機をお客様の肌に直接当てて、光を照射して施術することがほとんどです。スタッフが操作を誤る、脱毛機が故障し出力が制御できなくなるといった要因で、施術後の肌トラブルを引き起こしてしまう可能性があります。
施術によるトラブルは、スタッフ教育を通して人為的なミスを減らしたり、高性能で故障しづらい脱毛機を導入したりすることで、ある程度は防止できるでしょう。
しかし、お客様を傷つけてしまうリスクを完全になくすことはできず、また、場合によっては賠償責任が発生することもあります。多額の賠償金を自分で負担するとなると、サロンの経営状態に大きく影響してしまうと考えられます。
お客様の所持品に関するトラブル
脱毛サロンでは、お客様の所持品を預かった上で施術をすることが一般的です。
- 貴重品を鍵付きのロッカーで預かる
- 受付で預かる衣類は番号札を用いて管理する
- サロン全体の防犯対策を徹底する
上記のような対策を講じて、お客様の貴重品や衣類の紛失、取り違え、盗難を防止しなければなりません。万が一サロン側の過失によって預かった手荷物を返却できなかった場合、責任を持って補償する必要があります。
物販・プレゼントによるトラブル
美容機器を販売したり、キャンペーンの特典でスキンケア製品や化粧品をプレゼントする機会が多い脱毛サロン。肌トラブルのリスクや正しい使い方を事前に伝えても、サロンが提供する商品を使用したお客様が肌トラブルを訴えることも考えられます。
物販やプレゼントに関するトラブルは店舗外で生じることから、「言った」「聞いていない」という主張の食い違いで深刻化しやすいため注意が必要です。
サロンの設備が原因のトラブル
店舗の設備や備品によるトラブルについても頭に入れておかなければなりません。以下のようなケースが生じることを想定し、こまめに設備や備品を点検しておきましょう。
- 水回りの掃除不足や配管の詰まりによる水漏れ
- たばこの不始末やコンセントの発火による火災
- 電気系統のトラブル
- 施術用ベッドの破損
大規模な水漏れで床が水浸しになる、電気が復旧せず脱毛機を動かせなくなるというように事態が深刻化すると、場合によってはサロンを営業できなくなる可能性があります。また、自然災害により休業せざるを得なくなることも考えられます。
サロンを営業できないと本来得られるはずだった売上が失われ、サロンの経営状態に少なからず影響が生じるでしょう。
違法行為・無許可の施術によるトラブル
特別な資格がなくてもお客様に施術をすることができる脱毛サロンですが、医療機関ではないため、麻酔やレーザー脱毛といった施術を提供することはできません。禁止されている施術を無許可で行うと処罰の対象となり、サロンの経営を続けることは不可能になります。
こうしたトラブルはあってはならないものであり、保険に加入しても補償してもらえることはありません。
脱毛サロンが入るべき保険
脱毛サロンを開業する際に、ぜひ入っておくべき保険をご紹介します。
- 社会保険
- 火災保険
- 賠償責任保険
社会保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
社会保険は上記の5つの保険の総称です。
被保険者となるスタッフが1人以上いる法人サロン、そして常勤のスタッフを5人以上雇用している個人サロンは、健康保険、厚生年金保険、介護保険に加入する義務があります。
また、1人以上のスタッフを雇用しているサロンは、労災保険と雇用保険に加入しなければなりません。
火災保険
火災の他にも、自然災害や水漏れ、盗難といったケースを保証してくれることもある火災保険。任意の保険ではありますが、補償内容と料金を吟味した上で加入しておくと安心です。
自宅でサロンを開業する方には、店舗や事務所と兼用している住宅向けの火災保険がおすすめです。事業用の火災保険よりも保険料が安く、住宅用の保険よりも幅広い補償を受けられるプランが多くあります。
賠償責任保険
賠償責任保険に加入しておけば、施術場所や営業形態に関わらず、サロンが提供したあらゆるサービスによって発生した賠償責任について補償を受けられます。店舗だけでなく、スタッフ個人を対象としたものもあります。
賠償責任保険への加入は義務ではありませんが、安心してサロンを運営するためにも、加入しておくことをおすすめします。また、補償内容は多岐に渡り、火災保険が付帯するものもあるため、他の保険とのバランスを考慮した上で利用しましょう。
具体的な補償内容については、この後詳しくご説明していきます。
賠償責任保険の主な補償内容
美容系サロンに向けた賠償責任保険では、主に以下のような項目について補償が設けられています。
- 施設所有(管理)者賠償責任保険
- 生産物賠償責任保険(PL補償)
- 受託者賠償責任保険
- 借家人賠償責任・修理費用特約
- 事業保険総合保険・休業損害補償条項
施設所有(管理)者賠償責任保険
施設所有(管理)者賠償責任保険は、主に以下の2つのケースにおいて損害賠償を補ってくれます。
- 施術事故
- 店舗管理事故
サロンの施術行為による「施術事故」としては、脱毛の施術によってお客様に肌トラブルが生じてしまう、ジェルやクリームをお客様の衣類や持ち物にこぼしてしまうといったケースが考えられます。
また、サロンの設備や備品が原因である「店舗管理事故」も補償の対象です。具体的には、お客様が脱毛機のコードに引っかかって転倒してしまう、施術用のベッドが破損してお客様を傷つけてしまうといった事例が想定されます。
生産物賠償責任保険(PL補償)
サロンが提供した自社商品によって損害を負わせてしまった場合、お客様に直接賠償金を支払う必要があります。他社商品を取り寄せて販売した際は、賠償金を支払った後で製造業者に相当額を請求しなければなりません。
生産物賠償責任保険(PL補償)は、サロンが販売、プレゼントした商品による賠償責任について保証する保険です。サロン側が負担する賠償金について補償を受けられます。
受託者賠償責任保険
受託者賠償責任保険は、サロンで一時的に預かったお客様の所有物について、盗難や紛失などが起こった際に生じる損失を保証してくれます。
お客様から預かった衣類を汚してしまった際のクリーニング代や、手荷物を紛失した場合の弁償費用を代わりに負担してもらえます。
借家人賠償責任・修理費用特約
店舗や商品が傷ついたり、盗難にあったりした場合に必要となる建物の修繕費や、販売できなくなった商品に相当する金額を補償してもらえます。
賃貸で経営するサロンが傷ついた際に建物の所有者に支払う賠償金、サロンで保管しているお金が盗難に遭った場合の補填など、幅広い補償を請け負っています。
事業保険総合保険・休業損害補償条項
予期せぬ火災や自然災害でサロンに甚大な被害が生じ、休業せざるを得ない事態が発生するかもしれません。事業保険総合保険・休業損害補償条項では、営業していれば得られたはずの利益と同等の補償が受けられます。
脱毛サロンの保険選びのポイント
美容系サロン向けの保険プランには、様々な種類があります。以下のようなポイントを意識して、自分のサロンに合った保険を選択しましょう。
- 補償の適用条件をチェックする
- 保証内容を念入りに確認する
- 料金と経営状態のバランスを考慮する
- 店舗の規模に合った保険を選ぶ
補償の適用条件をチェックする
美容サロン向けの保険の中には、脱毛の施術が対象外となっているものや、スタッフに特定の資格がないと補償が受けられないプランがあります。
自分のサロンが補償の適用条件を満たしているかについて、施術内容やスタッフのスキルといった様々な観点から確認するようにしてください。
補償内容を念入りに確認する
補償内容についても念入りにチェックしておく必要があります。自分のサロンで発生する可能性のあるトラブルをリストアップして、それらを網羅したプランであるかどうかを見極めましょう。
いくつかの保険を見比べると、少ない費用で確実にリスクマネジメントができるプランを見つけやすくなります。
料金と経営状態のバランスを考慮する
毎月支払う保険料は、サロンの経営者にとって決して少なくない負担です。いくら幅広い補償を受けられても、月々の保険料が大きな負担になってしまうと安心してサロンを経営することができません。
サロンの規模や経営状態を考慮して、過度な負担にならない料金の保険を選ぶことも求められます。
費用と補償内容のバランスを考慮して保険を選ぼう
脱毛サロンを経営していると、ご紹介したような不測のトラブルに遭う可能性があります。万が一の事態に落ち着いて対処し、その後円滑に経営を続けるために、適切な保険に加入することをおすすめします。
自分のサロンの規模や経営状態、補償してもらいたい内容を十分に検討した上で、複数のプランを比較し、最適な保険を見つけてみてください。