エステサロンの売上を効率的に伸ばしていくためには、技術や知識だけでは不十分です。それらももちろん必要ですが、一人ひとりのエステティシャンが営業力を身に付けてこそ、サロン全体の売上を底上げすることができます。営業力と言っても様々な捉え方ができますが、一連の流れにおいて特に重要なのがクロージングです。

今回のコラムでは、実際にクロージングまで持っていくまでの流れや、クロージングを成功させるポイントを解説していきます。プランの契約数や物販の購入数が伸び悩んでいるという方はぜひ参考にしてみてください。

クロージングとは

「クロージング」は業界によって様々な意味がありますが、エステ業界においては「契約」、あるいは「契約を締結する過程」という意味で使用されることが多いです。例えば、お客様の施術が終了し、アフターカウンセリングで長期プランや回数券の購入を提案しますが、クロージングはその最終過程のことを指します。

つまり、成約や購入の確率に直結する、非常に重要なポイントということです。当然、クロージングだけでなく、それまでの接客やサービスの質の高さも影響を及ぼしますが、クロージングのポイントを抑えることで、成功率は大幅にアップする可能性があります。

エステティシャンには営業スキルが必要

知識や技術、ホスピタリティなど、エステティシャンには様々なスキルが求められますが、営業力もそのうちの一つです。むしろ、営業力はサロンの売上に直結する分、身に付ける優先度が高いスキルだと言えるでしょう。

言わば、エステティシャンとは施術もできる営業マンです。高い技術によってお客様を満足させるだけでなく、お客様に気に入ってもらい、しっかりとサロンの売上にも貢献できるエステティシャンこそが、本当に優秀なスタッフだと言えます。

クロージングまでの流れ

クロージングにおいて重要なポイントの前に、クロージングまでの流れをおさらいしておきましょう。一つひとつの行程を丁寧にこなすことで、クロージングはグッとやりやすくなり、成功率も上がります。

ヒアリング

まず初来店のお客様の場合、アンケートや事前のカウンセリングを通し、ヒアリングを行います。

  • どのような悩みがあるのか
  • どのような目的があるのか
  • 予算はどれくらいか
  • 来店のきっかけは何なのか

このように、ヒアリングの内容はありきたりなことでも特に問題はありません。

重要なことは、お客様のことを知りたいという気持ちを持ち、念密なコミュニケーションを取ろうとすることです。そうすることで、お客様の方から進んで自分のことを話してくれるようになります。

まだ経験が少ないスタッフの場合は、スタッフ同士でロープレを行い、お客様がどのような行動を取るかを事前に想定しておきましょう。

施術

実際に施術を行っていきます。予約時にどのようなメニューを受けるか決められているケースがほとんどですが、ヒアリングの内容次第では別のメニューを提案することも有効です。専門家の知識を活かし、お客様に最適なメニューをおすすめしてあげましょう。

アフターカウンセリング

施術が終わった後は、アフターカウンセリングに進みます。実際に施術を受けた感想だけでなく、新たに生まれた疑問や不安を聞き出し、一つひとつ解決していきます。

また、アフターカウンセリングはテストクロージングとも呼ばれますが、次のクロージングに進む上でも非常に重要なステップです。というのも、当然お客様によって成約に対する意欲の高さは異なります。

つまり、アフターカウンセリングでどれほどお客様の意欲を高められるかによって、クロージングの成功率が大幅に変化するということになります。

クロージング

最後にクロージングを行います。一度退店したあと、あらためてリピートしてくれる可能性ももちろんありますが、絶対ではありません。クロージングが成功するということは、次の来店がほぼ確定するということなので、結局クロージングの成功率が上がらないままでは、サロンの売上を伸ばしていくことは難しいでしょう。

クロージングのポイント

クロージングの成功率を上げるために大切なポイントを具体的に解説いたします。以下の点を意識し、少しずつ実践してみましょう。

  • 経験の有無によって対応を変える
  • わかりやすい資料を用意する
  • 未来の自分をイメージしてもらう
  • 選択肢を与える
  • すぐに料金表を見せない
  • 反応を待つことを心がける

経験の有無によって対応を変える

お客様によって適切な話し方やトーク内容は異なりますが、着目したいのは他のエステサロンを利用した経験があるかどうかという点です。初めて経験するお客様とは違い、そのようなお客様には利用を辞めてしまった理由と、再び利用しようと思った理由があるはずです。それらを明らかにすることで、話すべきことや触れてはいけないことが浮かび上がり、コミュニケーションのヒントになる場合があります。

わかりやすい資料を用意する

プランやメニューについてどれだけ口頭で詳しく説明しても、お客様がきちんと聞いてくれるとは限りません。実際のところ、施術が終わり、早く帰りたいと考えているお客様も多いです。

お客様の興味を引く手法はいくつかありますが、そのうちの一つがわかりやすい資料を用意するということです。聴覚だけでなく、視覚にも情報を与えることで、お客様が真剣に話を聞いてくれやすくなります。

未来の自分をイメージしてもらう

一般的にエステサロンの施術は1回で数千〜数万円の料金がかかり、決して気軽に通える価格帯ではありません。そんな中で成約率を上げるためには、サービスには料金を支払うだけの価値があることをわかってもらうことが重要です。

そのために有効なことは、サービスを受けることによって、未来の自分がどのように変化するかをイメージしてもらうことです。これを「ifクロージング」と呼びますが、自分や他のお客様の事例を伝えるほか、質問を投げかけて自分事と捉えてもらうことで、よりイメージしてもらいやすくなります。

選択肢を与える

もう一つ、クロージングにおいて有名な手法が「二者択一クロージング」です。例えば、「このプランは魅力的だと思いますか?」ではなく、「AプランとBプランだとどちらが魅力的だと思いますか?」という質問を投げかけます。

そうすると、お客様には必然的に選択肢が生まれます。押しつけがましさがなくなるだけでなく、自分のために様々な提案をしてくれていると感じてもらうことで、信頼度が高まります。

すぐに料金表を見せない

契約するかどうかを分ける材料として、やはり料金は重要です。前述した通り、サービスには料金相応の価値があることをわかってもらうことが理想的ですが、それにはある程度コミュニケーションの量を積み重ねる必要があります。

ただ、早々に料金表を見せてしまうと、その時点でお客様の中で結論が出てしまい、いくら説明してもそれを覆すことができなくなります。反対に、先にサービスの価値をわかってもらうことができれば、よほど予想外の金額でない限り、お客様も成約してくれるようになります。

反応を待つことを心がける

クロージングでは焦って結論を急がせようとすることも多いですが、反対にお客様にゆっくりと考える時間を与えることが重要です。何か意見や質問を投げかけた時には、お客様が何らかのリアクションを取るまで待ちましょう。

一方的に話しているだけでは、お客様もなかなか心を開いてくれません。こちらが聞きたいことを話してもらうだけでなく、お客様自身が話したいことを聞いてあげる姿勢を持つことが重要です。

お客様にとって心地よいクロージングを

確かにクロージングにおいては、成功率を上げるために心がけなければいけないポイントやテクニックがありますが、やはり最も大切なことはお客様のことを思いやることです。いくら軽快なトークができても、利益だけを考えているとお客様の心を動かすことはできません。

そのため、日頃からスタッフにホスピタリティの重要性を浸透させましょう。ホスピタリティと営業力を同時に養っていくことで、結果として成約率も上がっていきます。