近年、脱毛サロン業界では大手の倒産が相次ぎ、経営の難しさが浮き彫りになっています。

本記事では、脱毛サロン業界の現状や具体的な破産事例、破産の原因や破産を防ぐための対策などを詳しく解説します。

脱毛サロン業界の現状とは?

脱毛サロン業界は現在、大きな転換期を迎えています。

価格競争の激化により利益率が低下。一方で、広告やキャンペーン費用の増加が資金繰りを圧迫し、経営に行き詰まるサロンが増えています。

また、定額制やローン契約により一時的に売上を確保できたとしても、その後は長期間にわたりサービスを提供し続けなければならず、このことが経営の重荷になっています。

加えて、家庭用脱毛器の普及やセルフケア志向の高まりよって、サロンを利用する顧客自体が減少しているのも事実です。

こうした背景から、業界全体が経営の見直しとサービス内容の再構築を迫られています。

脱毛サロンの破産事例


近年、脱毛サロン業界では大手企業の相次ぐ破産が社会的な注目を集めています。

2022年には「脱毛ラボ」を運営していた株式会社セドナエンタープライズが破産。負債総額は約60億円にのぼり、約3万人の顧客が影響を受けました。

翌2023年には「銀座カラー」を運営していた株式会社エム・シーネットワークスジャパンも破産手続きを開始。全国に約50店舗を展開しながらも業績の悪化が続き、最終的に債務超過となり経営破綻しました。

さらに、同年には「シースリー」を展開していた株式会社ビューティースリーも自己破産を申請。負債総額は約80億円、債権者は約4万6000人にのぼるとされています。

セドナエンタープライズに関しては消費者庁から景品表示法違反による行政処分も受けており、コンプライアンス違反が経営に与える影響の大きさを示す事例ともいえるでしょう。

脱毛サロンの破産はなぜ起こるのか


脱毛サロンの破産が起きる原因として、次のものが挙げられます。

それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

前受金ビジネスモデルの限界

脱毛サロンの破産が起きる理由の一つに、前受金ビジネスモデルの限界があります。

前受金とは、企業や店舗が商品やサービスを提供する前に、顧客から先に受け取るお金のことです。

多くの脱毛サロンでは、顧客から得た前受金を広告費に充ててしまうため、施術に必要な運転資金が不足しがちといわれています。

そこに固定費も重なることでキャッシュフローが悪化。結果的にサービス提供が困難になり、経営破綻に陥るケースが後を絶たないのです。

広告費や設備投資コストの高騰

広告費や設備投資コストの高騰も脱毛サロンの破産が起きる理由です。

競合が増えたことで集客の争いが激しくなり、広告費が高騰。その結果、新規の顧客を集めるために必要なコストが増え、サロンの負担が大きくなっています。

また、高性能な脱毛器の導入や店舗の内装・拡張などにかかる設備投資の負担も重く、経営を圧迫する要因に。これらのコスト増が原因で破産に至るケースも少なくありません。

過度な価格競争

脱毛サロン業界では、競合の増加により過度な価格競争が起きています。

多くのサロンが顧客獲得のために料金を引き下げた結果、利益率が低下し、経営を圧迫しているのです。

特に、過度な値下げ戦略は収益性を損なう要因となり、キャッシュフローが悪化して破産に至るケースが増加しています。

人材不足と離職率の増加

人材不足と離職率の増加も、脱毛サロンの破産が起きる大きな要因です。

給与の低さや昇給の少なさ、長時間労働といった待遇面の課題に加え、シフト制の厳しさや休憩が取れない過酷な労働環境が離職の一因となっています。

また、女性スタッフが多い職場ならではの人間関係のストレスや、厳しいノルマによる精神的・身体的な負担も重なり、スタッフの定着が難しい状況です。

その結果、人材の確保や育成が追いつかず、慢性的な人手不足に悩まされているサロンも少なくありません。

コンプライアンス違反や評判の悪化

コンプライアンス違反やそれに伴う評判の悪化は、脱毛サロンの破産に直結する重大な問題です。

たとえば、医師の資格を持たないスタッフがレーザー脱毛など医療行為に該当する施術を行った場合、医師法第17条に違反する可能性があり、行政処分の対象となります。

また、実際のもの以上に効果を強調する誇大広告も、消費者を誤認させる行為として法律で厳しく規制されています。

これらの違反行為が発覚すると、営業停止や罰金などの処分が科されるだけでなく、SNSや口コミなどを通じて悪評が広まり、顧客離れを招く原因にもなるのです。

脱毛サロンを破産させないためには?


脱毛サロンを破産させないためには、次のような対策が必要です。

適正な価格設定をする

脱毛サロンの経営を安定させ、破産を防ぐためには、適正な価格設定が欠かせません。

開業時には集客を意識するあまり、競合より安い料金を設定してしまうケースも多いですが、必要以上に価格を下げると原価を回収できず、経営が行き詰まるリスクがあります。人件費や光熱費、脱毛機器の維持管理費などをしっかり計算し、持続可能な価格を設定することが重要です。

また、サービスの質に見合った価格にすることで、顧客の信頼も得られやすくなります。価格が安すぎると品質に不安を抱かれる一方、高すぎると集客が難しくなるため、バランスの取れた料金設定を行うようにしましょう。

コストパフォーマンスの高い脱毛機器を導入する

コストパフォーマンスの高い業務用脱毛機を導入することも、脱毛サロンの破産を防ぐための重要な要素といえます。初期費用だけでなく、ランニングコストや施術効率、スタッフの負担軽減までを視野に入れて選定することが大切です。

たとえば、照射ヘッドの面積が小さい機器は施術時間が長くなり、回転率が下がるうえにスタッフの疲労も増加し、離職率の上昇や人件費の増加につながるリスクがあります。「1ショット〇円」といった表面的な価格に惑わされず、照射面積やメンテナンスコストなども含めたトータルコストで比較検討をするようにしましょう。

また、サロンのニーズに適した機種を選ぶことも求められます。信頼できる販売担当者との関係を築き、丁寧な説明を受けたうえで導入を進めることが、長期的な経営安定につながります。

口コミや評判の悪化を予防する

脱毛サロンを経営するうえで、口コミや評判の悪化を予防することはとても大切です。特にSNSやレビューサイトでのネガティブな投稿は、集客に直接的な悪影響を及ぼすことがあります。

トラブルを防ぐためには、カウンセリング時に施術の内容や効果、リスク、料金などを丁寧かつ正確に説明し、必ず書面で同意を得ることが必須です。

さらに、施術後のアフターケアやクレームへの対応も迅速に行い、顧客の不満を放置しない姿勢が信頼の維持につながります。

また、ネット上の口コミや評判を定期的にチェックすることも重要。リアルタイムに情報を把握することで、サービスの低下やスタッフへの不満などネガティブな評価を早期に確認できます。

日頃の対応と情報収集が、信頼されるサロンづくりの土台となるのです。

脱毛サロンの破産を防ぐには原因と対策を知ることが大切

脱毛サロンの破産を防ぐためには、原因と対策を知ることが大切です。

前受金ビジネスのリスクや広告・設備投資の負担、スタッフの離職や人手不足、コンプライアンス違反など、経営の不振を引き起こす理由はさまざまです。リスクの低減には、無理のない価格設定やコストパフォーマンスに優れた脱毛機の導入、質の高いサービス提供や丁寧な顧客対応などが欠かせません。

原因と対策をしっかり理解し、地に足のついた経営を心がけて、安定したサロン運営を目指しましょう。