ここ数年、低年齢層の美容意識が高まり、エステサロンを利用する未成年のお客様が増えています。それに伴い、未成年者の受け入れを強化しようと考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、エステサロンがとるべき未成年のお客様への対応と、保護者の同意書に記載する内容について解説していきます。リスクを把握し、適切に対応してトラブルを回避しましょう。

エステの施術は未成年でも受けられる


エステの施術は、未成年者でも受けることが可能です。しかし、そのためには保護者の同意が必要になります。

未成年が施術を受けるためには親の同意が必要

日本の法律では、未成年の契約に対して、親の同意が必要と定められています。

2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられたため、18歳未満のお客さまへの施術は保護者の同意を得なければ行えません。また、学生など、18歳や19歳であっても支払い能力がない場合には、保護者の同意が求められるケースもあります。

保護者の同意は、未成年者への施術や契約において、お客様自身とサロンの利益を守るために必要不可欠です。

親の同意が不要なケース

前述のとおり、未成年は親の同意なくしてエステサロンと契約することはできません。

しかし、例外として、お小遣いのように「親から自由に処分してよいと決められたお金」については、未成年者であっても自由に契約できるとされています。金額は明記されていませんが、中高生のお小遣いと考えると、総額1万円以下の契約であれば親の同意は不要でしょう。

ただし、このようなケースでも、お客様の年齢や施術内容によってリスクが伴う可能性がある場合には、事前の確認が必要です。

未成年を理由に契約を取り消せる

未成年者には、法律に基づいて契約を取り消す権利があります。これは、法定代理人の同意がなく結ばれた契約は無効にできるという法律上の権利です。

たとえば、未成年者が親の了承なしに高額のエステプランを契約した場合、本人や親がその契約を取り消すことができます。

ただし、未成年であっても結婚している場合や、年齢を偽った事実が認められたときなど、一部のケースでは取り消しが認められないこともあります

エステサロンが未成年への施術を制限する理由


多くのエステサロンでは、次のような理由から未成年のお客様への施術を制限しています。

  • 肌に負担がかかる
  • 判断力に欠ける
  • 高額なサービスが多い

肌に負担がかかる

未成年者の肌はまだ発達途中のため、エステの施術が過度な負担になる可能性があります。10代の肌は大人に比べて敏感で、施術に用いる化粧品や機器によっては、肌トラブルを引き起こすかもしれません。

たとえば、ピーリングや脱毛など、刺激の強い施術によって、肌荒れや炎症が起こることが考えられます。また、思春期はホルモンバランスが安定しないことが多く、肌の状態が日々変わるためとくに注意が必要です。

判断力に欠ける

未成年者は、施術や契約内容を十分に理解し、適切に判断する能力が未熟な場合があります。施術による副作用や適切な間隔、効果の限界などを理解せずに契約すると、大きなトラブルにつながりかねません。

また、大人であれば伝わる言い回しが通じないこともあり、誤解が生じやすいのも懸念点です。そのため、エステサロンでは親権者の同意を求めたり、十分に内容を理解できるよう説明を工夫したりする必要があります

高額なサービスが多い

エステサロンの施術は高額になることが多く、未成年者が経済的な負担を正確に把握できない場合があります。とくに、コース契約のように長期間の支払いが必要なプランでは、将来的な支払い能力を超える契約をしてしまうリスクがあるでしょう。

そのためサロン側には、あとあと契約を取り消されて経営上のリスクが発生しないよう、未成年者との契約に制限を設けることが求められます

未成年者が無理なくサービスを利用でき、サロンも不利益を被らないよう、親の同意や選べるプランを限定するなどの制限を設けた上で契約を結ぶことが大切です。

【エステサロン】未成年のお客様への対応


若い世代の美容意識が高まっている昨今、リスクがあるからといって未成年のお客様を全く受け入れないのは困難です。未成年者の利用に対してしっかりとルールを定め、適切に対応してトラブルを防ぎましょう。

未成年向けのルールを策定する

エステサロンが未成年のお客様を受け入れる場合は、ルールを策定することが重要です。

たとえば、施術ごとの年齢制限や、保護者の同意、同伴を求める条件などを、具体的に内容を決めましょう。これらの基準を設けることで、お客様、サロン側それぞれの安全性が確保できます。

これらのルールは、ウェブサイトや店内に掲示し、施術を希望する未成年のお客様や保護者の目に止まるようにしてください。また、正しく契約ができるよう、スタッフにもルールをしっかり守ってもらいましょう。

年齢確認を徹底する

保護者の同意がない未成年への施術や契約を防ぐためには、年齢確認を徹底させましょう。学生証や保険証、マイナンバーカードなどの公的な身分証明書を提示してもらい、生年月日を確認します。

とくに、高額な契約や肌に負担のかかる施術をする場合、未成年者であることを見落とすと、トラブルに発展しかねません。万が一トラブルが発生した際に証拠として活用するため、身分証の情報は保護者の同意書と共に保管しておきましょう。

契約時は保護者に同席してもらう

未成年のお客様と契約を交わすときは、なるべく保護者に同席してもらいましょう。契約の内容や費用、施術の詳細を保護者に直接説明できるため、あとになって契約が取り消されるリスクを減らすことができます

また、保護者の同席は、不正な契約を防ぐためにも有効です。たとえば、同意書の提出のみでは、署名や印鑑が偽造されていても気づけません。目の前で保護者に署名してもらうことで、こちらが騙される可能性を大きく軽減できます。このほか、お客様の年齢によっては、施術への付き添いも必要です。

エステサロンの同意書に記載する項目


保護者にサインしてもらう同意書には、次の項目を必ず含めましょう。

  • サービスの種類、対象年齢、金額
  • 本人の氏名、住所、連絡先
  • 未成年への施術に同意する旨の文言
  • 保護者の署名

未成年者のお客様の場合は、本人の個人情報だけでなく、保護者の名前と連絡先も必要です。

提供する施術内容を詳細に記載し、その目的や期待される効果、可能性のある副作用やリスクも明記しましょう。また、施術前後の注意事項や、施術が制限される健康状態についての説明も忘れずに記載してください。

このほか、とくに重要なのは、施術内容やリスクについて十分理解し、同意したことが確認できる文言です。施術によるトラブルについて、明らかにサロン側の過失でない場合は免責される旨も記しておきましょう。

未成年が年齢を偽った場合はどうなる?


未成年者が親の同意なしに結んだ契約は、法律に基づき、取り消すことができます。しかし、未成年者が自分を成人であると偽った場合には、この権利が制限されることがあります。

提示された身分証明書などによって、サロンが未成年であることを認識できなかった場合、契約の取消しは認められない可能性が高いでしょう。

ただし、お客様が年齢を偽った場合でも、サロンが適切な確認手続きを怠っていた場合には責任を問われる可能性があります。たとえば、身分証を確認しなかったり、明らかに未成年と判断できる状況にもかかわらず契約を進めたりした場合は、おそらくサロン側に過失があると見なされます。

そうなってしまえばサロンにはデメリットしかないため、必ず年齢確認を徹底し、未成年者に対しては親権者の同意書や同伴を求めましょう。

【エステサロン】未成年のお客様には適切に対応

未成年者お客様がエステを利用する際には、保護者の同意が必要です。もし、同意がないままに契約を進めると、契約の取り消しをはじめとするトラブルにつながります。

未成年者との契約に当たっては保護者の同席などのルールを定め、年齢確認を徹底しましょう。万が一のトラブルに備え、身分証のコピーや同意書を保管しておくことも重要です。