様々な美容サロンのコースの1つとして導入されている「回数券」。
まとまった売上の確保やリピート率の向上など、サロン経営を安定させるために役に立ってくれる重要なメニューです。
ただし、回数券を採用するデメリットもいくつかあります。今回は、メリット・デメリット、実際のプランの考え方、注意点など解説いたします。
もくじ
エステサロンの回数券とは
まずは、エステサロンにおける回数券とはどんなメニューを指すのか説明していきましょう。
多くのエステサロンでは、お客様が料金を支払う方法は、【都度払い】もしくは【コース契約・回数券購入】に大きく分けることができます。
回数券購入とは、10回などある程度の回数分の施術券をまとめて購入する方法です。【5回分の施術券をまとめて購入することで、1回無料で施術してもらえる】など、都度払いよりも単価が安いことが多くお得感が強いのが特徴です。
エステサロンで回数券を導入するメリット
多くのエステサロンでは販促活動の1つとして回数券制度を取り入れています。具体的にどんなメリットがあるのか順に見ていきましょう。
- 継続的な来店を見込める
- 来店頻度をコントロールできる
- まとまった売上を獲得できる
- お客様にお得だと感じてもらいやすい
継続的な来店を見込める
エステサロンでは来店ハードルを下げるために、初回限定でお得なキャンペーンやクーポンを用意することが多いです。しかし、初回サービスのみ利用し、次の来店へ続かないというパターンも珍しくはありません。
一方、回数券を購入したお客様は、多くの場合、何度も店舗に足を運んでくれます。「行かないと支払ったお金が無駄になる」と考えるお客様が一般的だからです。
エステサロンは、継続的に通うことが効果の実感に繋がります。逆を言えば、一回の施術で大きな効果を感じることは少ないでしょう。
つまり、回数券を購入して継続的に来店していただければ、顧客満足度が上がり、回数券を使い切った後でも顧客になっていただける可能性が高まります。
計画的に施術を行える
前述した通り、エステサロンのメニューの多くが回数を重ねることで効果を感じていただけます。そのため本来であれば、カウンセリングで悩みや目標をヒアリングして、計画的に施術を行わなければ、満足のいく結果を提供することは難しいです。
回数券に合わせて、施術計画を立てたり、目標までの進捗を共有できたりするのはお客様にとっても安心感に繋がるでしょう。
まとまった売上を獲得できる
返金や解約などが発生しない限り、回数券を購入した瞬間に売上を確保することができます。
まとまった売上を獲得できることも大きなメリットですが、LTV(顧客生涯価値)の向上も利点の1つ。
LTVとは、顧客が生涯を通じて店舗や企業にもたらす価値のことを表したマーケティング指標を指します。多くの場合、新規顧客の獲得単価は既存顧客の維持に比べてコストが高いため、既存顧客のLTVを高めることが経営が安定するカギを握っています。
回数券を購入して継続的に通ってくれるお客様は、サロンを信頼し気に入っている可能性が高く、LTVが高くなりやすいのが特徴です。
お客様にお得だと感じてもらいやすい
多くの場合、回数券を利用すると都度払いと比較して施術単価が安くなります。そのため、お客様にお得感を与えられるのは大きなメリットです。
安くなった分、別のコースをセットで契約してもらえたり、物販に繋がったりすることもあるでしょう。回数券と組み合わせて選択しやすいメニューを用意しておくのがおすすめです。
エステサロンで回数券を導入するデメリット
回数券を導入することのメリットをいくつかご紹介しましたが、デメリットについても理解しておきましょう。
- 客単価が下がる
- 管理する手間が増える
- 回数券消費後に継続して顧客になるか分からない
- 施術者のモチベーションが低下する
- コストがかかる
客単価が下がる
前述した通り、回数券は通常の価格より一回当たりの施術単価が下がります。他のコースや物販のプラスが無ければ、単純に客単価が低下するのみです。
他のプランをおすすめしたり、物販を積極的にセールスしたり、お客様との信頼関係やエステティシャンのクロージング力の向上が必要でしょう。
管理する手間が増える
一般的に回数券は紙で発行することが多いですが、管理方法には工夫が必要です。
例えば、お客様が回数券を忘れた時、次回来店時に合わせて徴収しなくてはいけません。しかし、その次も忘れてしまったり、そのまま無くしてしまったりすることもあるでしょう。顧客が増えるほど、残り回数の管理は煩雑になります。
他にも、都度払いのお客様だったのに回数券支払いだと勘違いして、料金をもらい忘れてしまったなんてこともあるでしょう。
特にお金のやり取りでのミスは、お客様からの信頼を失うリスクもはらんでいます。管理方法やルールをしっかり決めておきましょう。
回数券消費後に継続して顧客になるか分からない
美しくなることやリラックスすることなど、お客様がエステサロンに通う理由は様々ですが、サロンが獲得すべき顧客は「サロンのファンになり通ってくれるお客様」です。しかし、回数券を購入し通ってくれるお客様の中には、いつしかサロンに通う目的が”回数券の消費”に代わってしまうお客様も少なくありません。
こうしたお客様は、回数券を使い切るとぱたりと来店してくれなくなります。
回数券は一時的な再来店を促すための優秀なツールです。通っていただいてる間に、サロンのファンになっていただけるように、質の高い施術や接客を提供しましょう。
施術者のモチベーションが下がりやすい
回数券を購入すると、購入直後にまとまった売上が立ちます。10回の施術が保証された回数券だとすると、残り9回の来店には売上が立ちません。
例えば、スタッフの給料に歩合制を採用していると、回数券を購入した初月に給与が増えますが、その後は施術を行っているのに給与は増えないことになります。すると、給与はそのままなのに忙しい状態が続き、モチベーションを保つことが難しくなるでしょう。
また、エステティシャンには、施術、カウンセリング、美容知識、接客など高度なスキルが必要です。回数券によって、施術単価が下がれば、スキルの安売りをされたと感じるスタッフもいるかもしれません。
売上管理や計上方法、回数券の使用期限を決める際にはスタッフへの配慮が必須でしょう。
コストがかかる
紙での回数券は作成コストがかかることを忘れてはいけません。デザイン費・カラー印刷費・ミシン目付・複写などの加工費が必要です。一般的には、1色で単純なデザインの場合100枚~1,000枚程度で数万円程度。
サロンのコンセプトに合わせて、デザインや仕様にこだわれば費用はプラスになります。
カードタイプやチケットタイプなど、仕様が決まったら何社かから見積もりを取るのが良いでしょう。大まかな相場を掴むことができます。
回数券のプランを設定するポイント
実際に回数券の価格を考えるときは、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
- 安価すぎる価格設定にしない
- 期間に注意する
- 電子回数券も検討する
- 期待できる効果をアピールする
安価すぎる価格設定にしない
回数券を購入することでお得に施術が受けられるのはお客様にとって大きなメリットです。しかし、必要以上に割引を行ってはいけません。
ご紹介した通り、むやみな値下げは施術者のモチベーションを下げる恐れがあります。また、根拠のない大幅な値下げは店舗の経営状態を悪化させてしまいます。
期間に注意する
回数券を販売する際は、使用期限も設定するのがおすすめです。有効期限があることで定期的にサロンに足を運んでもらいやすくなります。
ただし、この期間は慎重に設定してください。短すぎるとそもそも通うこと自体が難しくなり購入率は下がるでしょう。反対に長くすれば、後回しにされるうちに通わなくなってしまうことも。
平均的な来店スパン、効果を感じやすい期間を考慮して決定しましょう。
電子回数券も検討する
オンラインで回数券を発行できるシステムがいくつかリリースされています。オンライン回数券のメリットは何と言っても管理のしやすさです。
お客様の残り回数と期間を確認するなどの、事務作業にかかる手間を大幅にカットしてくれます。
期待できる効果をアピールする
お客様はエステサロンに通うとき、何らかの悩みがあったり、具体的な目標があったりする場合がほとんどです。
多くのお客様に回数券を購入していただくためには、お客様のニーズを満たし、魅力的に感じてもらわなければいけません。フェイシャルエステであれば「〇回の施術で透明肌に」といったように、具体的な回数と効果を示すようなメニュー名を付けるのが良いでしょう。
他にも、期間限定で回数を増やしたり、プレゼントを用意したりするのも、お客様の購買意欲を上げる策として有効でしょう。
エステで回数券を販売する注意点
回数券を販売する前に注意してほしいことが3点あります。
- 法令について理解する
- 閑散期の集客ができるように販売開始日を考える
- 告知についても考える
法令について理解する
エステの回数券は、長期的な契約を基本としており、金額も高額になることが多いです。この場合、通常の施術とは違う契約書の取り交わしが必要になるケースがあります。
サービスの提供期間が1ヶ月以上、もしくは金額が5万円を超える場合は、「特定商取引法」により以下の書類を交付する取り決めになっています。
- 概要書類
- 契約書面
また、契約に関しても以下の制度が適用になる可能性があります。
- クーリングオフ
- 中途解約
トラブルを未然に防ぐためにも、契約書に解約や返金対応について明記しておきましょう。
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閑散期の集客ができるように販売開始日を考案する
美容サロンの閑散期は、1月中旬から2月、6月、11月といわれています。
回数券の販売時期をこの時期に合わせると、レギュラーメニューでの売上が落ち込んでいても、まとまった売上を見込めますし、繁忙期前の顧客獲得に繋がる可能性が高いです。
合わせて使用期限も閑散期に設定すると、回数券を消費したいお客様が来店してくれるかもしれません。
告知計画を行う
どれだけ入念に回数券のプランを立てても、告知しなければ顧客は集まりません。ホームページやSNS、チラシを活用し早めの告知を行いましょう。
既存顧客へのアピールも忘れてはいけません。カウンセリングで口頭にて伝えたり、店内POPを用意したりと、自然な形で顧客の関心が高まるよう仕掛けてください。
エステの回数券は入念なプランニングが重要
エステサロンでの回数券の採用について詳しく説明してきました。
回数券を導入するのは、以下のような大きなメリットがあります。
- 継続的な来店を見込める
- 来店頻度をコントロールできる
- まとまった売上を獲得できる
- お客様にお得だと感じてもらいやすい
ただし、売上管理や契約についての法令など、注意しなくてはいけないことも多くあります。
エステサロンでの回数券は、入念な準備を行い、お客様のニーズにマッチすれば、売上の安定に大きく役立ってくれます。
「サロンメニューの見直しを検討している」「エステサロン開業を控えている」というオーナー様は、ぜひこの記事を参考にしてください。