フェイシャルエステサロンの開業にあたり、保健所への届出が必要か否かは、多くのオーナー様が悩むポイントです。
万が一必要な届出をしなければ、法的な責任が問われる可能性もあります。のちのちトラブルが起きないよう、開業の前にしっかり確認しておきましょう。
この記事では、フェイシャルエステサロンの開業にあたり、保健所への届出が必要なケースについて解説しています。届出の流れもまとめているので、あわせて確認してください。
もくじ
フェイシャルエステサロンの開業は保健所に届け出る?
エステサロンを開業する場合、保健所への届出は基本的に不要です。ただし、業態によっては届出が必要になるので注意してください。理容師法や美容師法で定められている施術を行う場合には、保健所へ届け出なければなりません。
フェイシャル専門のエステサロンは、これらの法律に抵触する可能性があるため、とくに気をつけましょう。
法律では、首から上のみの美容施術を行う際には美容所登録や保健所への届出が必要であると定められています。しかし、フェイシャルエステではデコルテまで施術を行うことが多いため、全身美容とみなされるケースも少なくありません。
これらの判断は自治体によって異なるので、必ず事前に確認してください。万が一、必要な届出を怠った場合には、罰金や営業停止といった処分を受ける可能性があります。
フェイシャルエステで保健所に届け出るケース
フェイシャルエステを開業する際、必ず保健所への届け出が必要になるケースを見ていきましょう。
国家資格が必要な施術を行う
次のような施術を行う場合には、国家資格が必要です。
- まつ毛エクステ(美容師)
- 鍼治療や灸療法(はり師、きゅう師)
- 指圧マッサージ(あん摩マッサージ指圧師)
フェイシャルエステとともにこれらの施術を行う場合には、保健所へ届け出ましょう。
容姿を美しくすることを目的とした施術で化粧品や医薬部外品を用いる場合にも、理容師・美容師免許が必要です。
簡単な汚れ落としやマッサージであれば、理美容師法の範囲には該当しませんが、それでは施術範囲が大きく限られてしまいます。フェイシャルエステサロンを開業する場合には、理美容師資格があると安心です。
刃物を使用する
フェイシャルエステでは、顔そりを行うことも珍しくありません。カミソリや電気シェーバーを使用する際は理容師免許が必要なため、保健所への届け出義務が発生します。
お客様の体に刃物を当てる施術には、技術と知識が必要です。そのため、眉毛カットのようなサービスでも理美容師資格がない場合は実施できません。
施術で刃物を使用する場合は、必ず資格と届出が必要になります。
保健所への届出の流れと必要書類
保健所への届出が必要な場合に備え、手続きを行う流れを把握しておきましょう。必要な書類も確認し、不備がないように揃えてください。
保健所での申請手続きの流れ
保健所への申請手続きは開業前に行う必要があります。まずは、計画段階で保健所の担当窓口に相談し、事前確認を行いましょう。店舗の設備や衛生基準が法令に適合していなければ、準備や手続きがスムーズに進みません。
相談時には図面や計画書を持参し、必要な修正点を確認します。その後、必要書類を用意し、開業予定日の1〜2ヶ月前には正式に申請を行いましょう。
保健所の審査を受けて基準を満たしていれば、2週間程度で営業許可が下ります。必要書類や手続きに不備がないよう、事前にしっかりと確認することが重要です。
オープン予定日から逆算し、間に合うようにスケジュールを組んでください。
申請に必要な書類
保健所に提出する必要書類は、次のようなものが挙げられます。
- 開設届書
- 美容師免許
- 診断書
- 店舗の図面
- 従業員名簿
- 防火設備の配置図 など
書類に不備があると審査が遅れるため、提出前にしっかり確認しましょう。
これらの書類のほか、検査の手数料も必要になります。この金額は自治体によって異なりますが、2万円前後に設定されていることが多いです。
また、美容所を譲渡する、法人化するといった場合には別の書類が必要になるため、自治体のホームページなどで確認してください。
【フェイシャルエステ】衛生基準とチェック項目
フェイシャルエステサロンの運営で意識したい衛生基準と、保健所がチェックするポイントを確認しておきましょう。
衛生管理基準
エステサロンは常に清潔であることが求められます。そのため、掃除用具のほか、お客様に触れる道具やタオルなどを消毒できる設備が必要です。
施術に使用する機器や道具は整理整頓し、清潔なものとそうでないものの区別がつくようにしておきましょう。
なお、スタッフの手指の消毒や体調管理、清掃の手順などにも気を配る必要があります。
保健所が確認する主なポイント
保健所の検査では、主に次のようなチェック項目で美容所の基準を満たしているか確認します。
- 消毒済みの道具が密閉された場所に保管できる
- 消毒用の流し台、流水装置が設置されている
- 床や壁に不浸透性材料を使用している
- 採光、換気、照明が十分である
- 蓋つきのゴミ箱が設置されている
これらの設備が問題なく整っていると判断されれば、検査済証が交付され、開業が可能になります。
フェイシャルエステ開業後も継続的な衛生管理が必要
無事に開業できたあとも、衛生管理を徹底することが大切です。保健所の定期的な監査に備え、管理体制を整えておきましょう。
定期的な保健所の監査
保健所に届け出て開業した場合、定期的に保健所の監査を受ける必要があります。監査では、店舗の衛生状態や機器の消毒状況などがチェックされます。
自治体や検査官によって見る場所や厳しさが異なりますが、普段から衛生管理を徹底していれば問題ないでしょう。
消毒履歴や清掃スケジュールの記録をきちんと保管しておくことも重要です。自主管理表などを活用して、日々の活動を記録してください。
監査で指摘があった場合は、管理体制を見直し、速やかに改善する必要があります。
トラブルを防ぐための管理体制
衛生上のトラブルを防ぐためには、適切な管理体制の構築が欠かせません。スタッフ全員が共通の衛生ルールを理解し、実行できるように研修を行うことが重要です。
消毒や清掃の手順を統一し、誰でも同じ手順で作業を行えるようにしましょう。衛生状態が維持できれば、感染症や肌トラブルのリスクも低減できます。
さらに、定期的にお客様の肌の状態や施術に関する質問をし、問題を見逃さないことも大切です。
日々の業務で徹底した管理を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、信頼性の高いサロン運営を実現できます。
フェイシャルエステの開業を成功させるポイント
フェイシャルエステサロンの開業では、必要に応じて申請や手続きを行います。しかし、保健所への届出のように、どんな手続きが必要なのかを自身で判断することは容易ではありません。
法令に違反することなく開業するためには、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
行政書士や開業コンサルタントなどは、書類作成や申請手続きに精通しており、起こりがちな書類の不備や申請時のミスを防いでくれます。早い段階で専門家に相談することで、開業までのスケジュールをより具体的に設定できるでしょう。
開業前の大切な時間と労力を大幅に削減し、安心して手続きを進めることができるため、コスト面でも効率的です。
とくに初めて開業する方にとっては、専門家の知識と経験を活用することは不安要素を減らし、成功率を高めることにつながります。
保健所への届出は適切に
フェイシャルエステサロンの開業では、提供するサービスが美容師法や理容師法などをはじめとする、さまざまな法律に触れていないかを確認することが大切です。
施術内容や使用する薬剤によって資格や届出が必要な場合は、正しい手順を踏んで適切に行ってください。自治体によって条件が異なるケースもあるため、事前に窓口で相談するとよいでしょう。
初めての開業などで手続きに不安がある場合は、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。