「美容は女性のもの」という価値観が変わり、昨今の美容業界には、男性向けサロンや男性用化粧品などの「メンズビューティー」商品が続々と登場してきています。その背景には、男性の美容に対する興味関心が高まってきたということが挙げられますが、根本的な要因は「社会やトレンドの変化」です。

そこで本記事では、メンズビューティー市場が拡大している要因について解説していきます。また、今注目のメンズ向け美容サービスについてもご紹介するので、サロン開業を検討している方や、興味のある方はぜひ参考にしてください。

男性が美容に興味を持ち始めた理由

若者の美容との向き合い方

いわゆるZ世代と呼ばれる10代〜20代前半の男性の間で、メンズビューティー市場が拡大しています。かつては化粧品を買うこと自体に抵抗があったり、周囲の目を気にしたりと美容へのハードルが高いものでした。

しかし、近年は「ジェンダーレス」というワードが浸透し、若い世代であるほど、「男性らしさ」を求められることに対して疑問を持つ人が増えてきました。その風潮に合わせてメンズコスメや脱毛の広告が登場したり、大手の化粧品ブランドが広告に男性タレントを起用することで、市場はより拡大してきています。

また、韓国アイドルの流行も要因の1つです。メンズコスメが一般的に許容されるようになり、白い肌に平行眉、血色感のあるリップなど、自然かつ綺麗なメイクに興味を持つ男性が増えてきました。

コロナ禍が与えた影響

コロナ禍の影響によって、オンラインで仕事をしたり授業を受ける頻度が高くなりました。

自分の顔を見る時間が長くなったことで、肌を綺麗にすることへの関心が高まってきたと言えます。また、日常的にマスクをすることで肌荒れが起こりやすくなったことも、スキンケアに興味を持つ人が増加した要因の1つです。

以下は、大手美容ポータルサイト「@cosme」を運営する株式会社アイスタイルが男性向けに行ったユーザーアンケートです。

同社はプレスリリース内で、15〜59歳の男性利用者172人のうち、約7割が「新型コロナウイルスによって美容に関する行動や考え方に変化があった」と回答したことを発表しました。

参考:株式会社アイスタイル「美容とライフスタイルに関するアンケート」調査結果

@cosmeの調査によると、その傾向は特に20代以下の若年層で顕著に見られており、詳細欄には「マスク荒れが気になった」「自分の肌と向き合うようになった」などの回答がありました。また、スキンケアをすることで気持ちが前向きになるなど、不自由な生活が続く中でプラスの効果を感じた人もいました。

男性向け美容サービスの種類は?

ここからは、昨今注目が集まっているメンズ向けの美容サービスについてご紹介します。

メンズエステサロン

一般的なエステサロンと同じく、体の様々な部位に施術を行います。代表的な施術内容は以下の通りです。

  • ニキビ・毛穴ケア
  • エイジングケア
  • むくみケア・リフトケア
  • 痩身
  • ハンドエステ

男性は、ホルモンの関係で脂性肌になりやすかったり、シェービングで肌が荒れやすい傾向にあります。そのため、肌荒れに効果があるピーリングや保湿メニューが人気です。

男性向け脱毛サロン

男性向け脱毛サロンは、メンズ美容の中でも全国的な認知度や浸透度が高くなりつつあるサービスです。

特にヒゲ脱毛が人気で、「もうヒゲは必要ない」と考える男性が非常に多くなっています。毎日のヒゲ剃りの手間がなくなるだけではなく、自分で整えるのは難しいデザインヒゲに挑戦できたりと、ヒゲは脱毛するメリットが非常に大きい部位です。

特に清潔感や若々しさを出したい営業職・サービス業の方からのニーズが高く、パートナーに勧められて脱毛を始めたという男性も多いです。完全に毛をなくさなくても、薄くする、量を減らすとことを目的とした脱毛も人気が高いです。

男性向け美容室

男性スタッフが男性向けに施術する美容室も拡大しています。

理容室よりも1人ひとりに合わせたデザインを提案することができたり、トレンドを押さえたデザインを得意とする場合が多いため、髪型にこだわりたい方におすすめです。また、お客さまが男性のみなので、気兼ねなく通えることも魅力の1つです。

男性向け眉毛サロン

男性向け眉毛サロンも、コロナ禍で急速に人気を集めています。日常生活においてマスクが当たり前になったことで、目元や眉毛のケアを意識する人が増えたことが理由として挙げられます。

眉毛を綺麗に整えることは第一印象の向上に繋がるため、コロナ禍の身だしなみとして眉毛サロンを定期的に利用する男性が急増しています。

男性向けコスメ・スキンケア用品

コロナ禍で決して順風とは言えない昨今の化粧品市場。コロナが流行し始めた2020年には、特にリップの売上が大きく落ち込んだことは有名です。

しかし、それに対して非常に大きな伸びを見せたのが「男性向けコスメ」。外出をする機会が減ったり、マスクをすることでシェービングの売上は落ち込んだものの、基礎化粧品は大きく伸びました。

要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 在宅勤務によって、美容にかける時間が増えた
  • 外出先での出費や飲み会が減り、金銭的な余裕が生まれた
  • オンライン会議などで自分の容姿を見る機会が増え、ケアを意識し始めた
  • マスクによる肌荒れから、スキンケアの必要性を感じた

市場調査やマーケティングリサーチを行う株式会社インテージが全国15歳〜79歳の男女消費者52,500人に対して行った調査によると、2020年の男性化粧品市場は前年と比べて104%に伸びてます。コロナ禍にも関わらず、売上は縮小するどころか成長を見せたことから、まだまだ伸びしろがあることがわかります。

引用・参考:株式会社インテージ「コロナ禍でも伸びた!男性の化粧品購入」

今後のメンズビューティーの市場はどうなる?

メンズビューティー市場は、コロナ禍の影響も相まって大きな成長を見せました。今後も拡大し続けていく見込みがありますが、世代によって美容に対する意識は異なります。そのため、男性をターゲットに見据える場合には、それぞれの世代に合わせて戦略を考えていく必要があります。

例えば、若年層ではメイクなどの美容そのものを楽しんでいる人が多いです。そのため、気分を変えるパッケージの製品を売り出したり、人気の男性タレントを起用したりすることで注目を集めることができます。

その一方で、20代後半からの層は、メイクを楽しむというよりも、悩みを解消することへ意識を向けていることが多いです。具体的には以下のような悩みが挙げられます。

  • 肌荒れが気になる
  • クマが目立つ
  • 肌が乾燥する/脂っぽくなる

まだ化粧品への抵抗がある人もいるので、まずは商品を手に取りやすいようなパッケージを意識したり、機能面にこだわることで市場拡大の可能性が高まります。

今後の市場拡大を見据えた計画を

「ジェンダーレス」が浸透している今、「男性らしさ」よりも「自分らしさ」を求めることへの喜びや楽しさを感じる人が増えています。他にも韓国アイドルの流行、コロナ禍の影響など様々な要因によってメンズビューティー市場が拡大してきました。

今後の市場拡大に向けて、既に美容に興味がある顕在層はもちろんですが、潜在層へのアプローチも必須です。今後サロン開業を検討・計画する際に、今回ご紹介したことを参考にしてみてください。