看護師の独立と聞くと、訪問看護ステーションや保育所、介護施設の常勤など医療関係の現場を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には看護師の経験や知識を武器にして他業種で活躍されている方も多いです。
今回のコラムでは、看護師の資格を生かした独立の中でも、人気のサロン開業について解説していきます。
看護師の経験が美容サロンに活きる?
常に命の責任と戦う看護師の仕事は、やりがいはあるものの、待遇や人間関係、休日の講習などの負担が大きく、自分らしく働く選択肢として独立を選ぶ方がいます。
訪問看護ステーションやデイサービス、助産院の開業など資格を活かした起業には多くの形がありますが、注目を集めるのが美容サロンの開業です。
一見すると関係無いように感じますが、医療も美容サロンもお客様(患者様)の身体の悩みに寄り添うという点で共通しています。医療の知識のあるエステティシャンであれば、お客様も安心して相談いただけたり、お任せしていただけたり、看護師の資格がプラスに働きます。
また、看護師としてさまざまな患者さんを支える能力は、お客様の悩みをサポートするエステティシャンにも重要な力のひとつです。
エステティシャンに資格は必要?
エステサロンや脱毛サロンなど、美容サロンの開業が人気という理由の一つが、資格が無くとも開業が行えることにあります。
日本には美容に関するさまざまな資格がありますが、エステティックに関する国家資格はありません。代表的な「日本エステティック協会(AJESTHE)」と「日本エステティック業協会(AEA)」が認定する資格がありますが、どちらも民間資格です。
資格を取得することは、必須ではありませんが、確かな知識を得たりお客様の信頼度を上げるために勉強するのも良いでしょう。
看護師がサロンを開業しオーナーになるメリット・デメリットは
生涯安定した収入を得られること、ブランクがあっても職場が見つけやすいことから「一生安泰」と言われることもある看護師の仕事。サロンを開業するか迷ったときに理解しておきたいのが、メリットとデメリットです。
看護師がオーナーになるメリット
看護師の経験を生かしてサロンを開業するメリットには以下の5つがあげられます。
- 他店との差別化になる
- 時間や場所に縛られず働ける
- 好きなことを仕事にできる
- 収入UPが目指せる
- 年齢に関係なく働ける
他店との差別化になる
前述した通り、美容サロンには特別な資格や届出が要りません。参入しやすいため、競合が多いのも事実です。そんな中でサロン運営を成功へと導くカギとなるのが、ライバル店との差別化です。
- 筋骨格の知識を生かしたマッサージ
- 美容皮膚科ナースが選ぶスキンケア用品
上記のように、看護師資格があるセラピストとなると、それだけで競合との大きな違いを見せることが可能になります。自分の経験や知識が、集客のための大きな武器になってくれるはずです。
時間や場所に縛られず働ける
看護師として病院に従事していると、出勤は必須、夜勤や土日もシフトで勤務するという働き方が一般的です。
しかし、自身がサロンオーナーとなれば、自宅で開業したり、子育てや家事の隙間時間だけという働き方も可能です。自分で働く場所や時間を決められるのは、看護師の仕事にはない大きなメリットです。
好きなことを仕事にできる
サロンでの仕事を長く続けるには、「美容が好き」という気持ちが大切です。美容業界はトレンドが目まぐるしく変わっていくため、常に情報をキャッチアップしていくことが非常に重要になるからです。
好きではないことに時間を割いていくことは思っているより難しいものです。逆に言えば、好きなことで頑張っていきたいと考えている女性にとってはぴったりの職業ともいえます。
収入UPが目指せる
従業員としてのエステティシャンの平均年収は約350万円、独立した方の平均年収は500〜1,000万円と言われています。
平均年収が高めと言われている看護師の仕事ですが、サロンの経営がうまく行けば年収アップも夢ではありません。サロンの運営が軌道に乗るかは事前準備にかかっています。しっかりと経営戦略を立てて運営を行えば、成功する確率もぐんと上がります。
年齢に関係なく働ける
看護師は夜勤や力仕事も多く、精神的な負担も大きな仕事です。心身ともに疲れたり、年齢を重ねても働き続けることができるのか不安に感じたりする方も多いです。
エステティシャンは、一度技術をしっかりつければ、女性でも生涯続けられる仕事です。
また、高齢化に伴い、サロンに来店されるお客様の年齢層も上がっています。悩みに共感し、自分の経験を踏まえた話ができるのは、自身の強みになります。エステティシャンは人生経験を活かして活躍できる職業です。
看護師がオーナーになるデメリット
どんな業種にも言えることですが、起業するのはリスクもあります。看護師からエステティシャンにジョブチェンジする場合に考えられるデメリットは以下の通りです。
- 経営が軌道に乗るまでは収入が安定しない
- 今までの常識が通用しない
経営が軌道に乗るまでは収入が安定しない
病院やクリニックで勤務していた時と異なり、収入は固定給ではありません。毎月の集客数や売上によって収益は変動します。また、オープン直後は、新規顧客やリピーターの獲得に苦戦することも想定しておかなければいけません。
また、看護師とは違って売上が景気の影響などをダイレクトに受けるのも大きな特徴です。収入面で不安がある場合は、スポットで週1〜2回程度、アルバイトで看護師の仕事を続けるという働き方もあります。こういったフレキシブルな働き方ができるのも看護師資格の強みのひとつでしょう。
今までの常識が通用しない
看護師からの転職で、今までの常識が通用しないと感じることがあるかもしれません。また、オーナーとなれば、接客だけではなく経営に関する知識も必要です。
消費者契約法や民法など、契約に関する法律についても理解しておいた方が良いでしょう。
サロン経営を成功させるためには、ノウハウががあると安心です。美容機器メーカーがサロンの運用に関してセミナーや講習会を開催していることがあります。不安な場合は美容機器の選定の際に、こうしたアフターサービスなども合わせて比較するのがおすすめです。
独立開業したい!流れを確認しよう
実際に独立開業を行う際、どのような順序で開業まで進行していくのか流れを確認していきましょう
- 事業計画を行う
- 開業資金を用意する
- 開業準備をする
事業計画を行う
どんなサロンをどのくらいの予算でいつまでにオープンさせるのか、またオープン後の経営計画をまとめたものが事業計画書です。
- サロンの場所
- コンセプト
- 提供メニュー
- 必要な資金
資金を調達する際にも必要となるため、上記の項目をまとめておくと良いでしょう。
美容クリニックなどで勤務していた看護師の方で気を付けたいのが、クリニックで使用していた機械はエステサロンではほとんど使用することができないということです。例えクリニックでは1人で施術していたとしても、エステサロンでは提供できないことが法令によって定められています。
- アートメイク
- レーザー脱毛機
- ダーマペン
など、美容医療で人気のこれらのメニューも、医師の管理下でしか施術できません。サロンメニューを考える際には、十分注意して、サロンの強みになるメニュー決めを行いましょう。
開業資金を用意する
事業計画に基づき、資金調達を行いましょう。もちろん、全額自己負担でも良いですが、業務用美容機器は高額なものも多いです。融資を受けることも踏まえて考えましょう。
資金調達の方法は、他にもインターネットを通じて不特定多数の支援者から少額の資金を集めるクラウドファンディング等があります。成功すればオープン時からファンがつくため、集客に有利に働いてくれる可能性があります。
開業準備をする
開業準備は非常に多岐に渡ります。
- 内装工事
- 外装工事
- 備品、家具、消耗品購入
- インテリア
- 業務用美容機器の購入
- 書類の準備
- 集客計画の立案
- 開業届の提出
大まかな流れだけでも以上の工程が必要となり、さらに詳細を決定していくとなればかなりの労力が必要です。
個人のサロンの場合、最初からお客様が自然と集まることはほぼありません。そのため集客計画についても忘れずに行いましょう。
- SNSアカウント作成
- ホームページの制作
- 広告出稿
- 予約サイトの出稿
- チラシのポスティング
ひと口に集客方法と言ってもさまざまな方法があり、どれかひとつだけに注力すればお客様が来てくれるというものでもありません。
ターゲット層のお客様に知ってもらうためにはどんな集客方法が最適なのか選定しましょう。
開業準備は目まぐるしいものですが、時にはプロの手を借り相談しながら進めていくのが上手く進行するポイントです。
看護師のサロン開業は事前準備が重要
看護師の資格を活かしながら、自分らしくいられる独立という働き方。もちろん大変な部分はありますが、好きなことを仕事にしながら、好きなように働く姿は憧れますよね。
看護師の経験はエステティシャンになっても活かすことができます。患者さんの身体の不安を効き出し、寄り添い、希望に近い治療方法をサポートするという経験は、まさにエステサロンのカウンセリングから施術までに通じるものがあります。
自身の強みを生かしたサロンを作り上げていけば、サロン運営の成功に導くことができるはずです。