エステサロンを開業するにあたり、大切な物件選び。どれだけコンセプトやメニューをしっかり考えていても、賃料が安いからや駅から近いからなど、安直な理由で物件を選ぶのはNGです。今回は物件選びで知っておきたい基本的な情報と選び方を解説していきます。
自宅かテナントか開業場所を決める
物件選びにあたって、最初に決めたいのが「自宅でのエステサロン開業」か「賃貸でのエステサロン開業」かです。メリットデメリットを踏まえて、どちらにするか考えていきましょう。
自宅サロンのメリット
自宅の一部を利用してサロンを開業する方法です。家賃が発生しないので、リスクを押さえながら始められるのが最大の魅力。浮いた費用で、インテリアやリフォームにお金を掛けるなど、お客様がくつろげる空間を作りましょう。
開業、運転資金を抑えられる
家賃として出ていくお金が減るので、賃貸に比べて開業・運営資金が少なく済むのがメリットです。
固定経費を減らすことは、損益分岐点が低くなり、利益の出やすさに関わってきます。賃料は大きな経費のひとつ。リスクを抑えながらのんびりと仕事をしたい人に、自宅開業はとてもおすすめな方法です。
自分のペースで仕事ができる
運転資金の少なさから、自分のペースで働くことを選択しやすいのも特長です。“子どもがいない昼の時間帯だけ”、“気分転換も兼ねて週3回のみのオープン”、“副業で週末だけ開業したい”など、利益重視ではなく技術を生かしながらのんびりと経営していくことが可能です。
自宅サロンのデメリット
集客に苦労する
住宅地での開業となるため、基本的には集客に不向きな土地であることが多いです。駅から徒歩圏内ではなかったり、車が必要なのに駐車場がなかったりと、お客様がどのように来店するのかをよく考えて開業しましょう。
ターゲットを近隣に住む方に絞っても同じです。住宅地では看板など設置するのが難しいことも多いので、どのように自分のサロンを知ってもらうかを考えなければいけません。
マンションやアパートの際は大家さんに確認を
マンションやアパートでサロンを開業したい場合は注意が必要です。通常、部屋を借りる際に大家さん(もしくは不動産屋さん)と「賃貸借契約」を結んでいます。この契約には“住居用”と“事業用”があり、ほとんどの場合“住居用”で契約を行っています。
自宅での開業を考えているのであれば、“事業用”の契約を行わなければいけません。
「バレないから」「ひっそりとやるから」という理由で勝手に開業すると、最悪の場合退去を求められることもあります。必ず、大家さんに確認・相談をしましょう。
これは賃貸だけではなく、分譲マンションも同じです。事前に管理組合へ確認を行うようにしてください。
自宅住所を公開しなければいけない
自宅の一室を使って開業する場合、住所をチラシやホームページなどで公開しなければお客様は来れません。宣伝のために住所や電話番号を不特定多数に公開するのは少し心配になるもの。
どんなお客様をターゲットにしようとトラブルが無いとは言い切れません。同居している家族にも相談し、リスクについても話し合い、開業を行うといいでしょう。
非日常感が出にくい
アットホームな雰囲気は自宅サロンでの魅力ですが、裏目に出ることもあります。エステサロンでは、日常から離れてリラックスできる空間を作ることが重要ですが、自宅サロンでは生活感を完璧に取り払うのは難しいと言えます。
施術ルームにどれだけ気を使っていても、家族と共有スペースの玄関や近所から子どもの遊び声が聞こえるなど、完全に防ぐことはできません。インテリアや香り、雰囲気づくりなど、来店したお客様に非日常を提供できるようこだわりたいところです。
人気サロンになると、ご近所や家族とのトラブルになることも
人気が出て人が増えれば増えるほど、注意したいのが同居する家族や近所とのトラブルです。
自分にとっては常連のお客様であっても、近所の人からしたら見知らぬ人です。不特定多数の人が住宅地に出入りすることは不安に感じることがあることを忘れてはいけません。
自宅サロンに限らず言えることですが、どんな方が来るのか分かりません。女性専用サロンを謳っていても、男性が来ることもあるかもしれません。「もしも」の時を考えておくことは開業の際とても重要です。
賃貸のメリット
物件を借りて開業する方法です。自宅サロンに比べて費用は掛かりますが、しっかりと稼ぐことを考えると賃貸物件がおすすめです。
サロンのコンセプトに合った開業場所を選べる
自宅サロンに比べて自分の好きな場所に店舗を構えられるのが賃貸の魅力。サロン運営を成功させるためには立地は非常に重要です。
例えば、美容好きな女性向けに最新技術を提供するサロンを考えた時、住宅地ではターゲットに届きにくいでしょう。若い女性が集まる街やオフィス街、かつ駅近の物件など、自分がイメージするサロンを作るためには開業場所も非常に重要です。
集客がしやすい
人通りの多い路面店を選ぶ、商業施設のテナントとして出店、通いやすい駅にほど近いマンションの一室、など立地を含めて自由に集客の施策を練れるのも賃貸物件ならではの特徴です。
自宅住所だと抵抗のあるホームページやSNSなど、不特定多数へ公開も、賃貸なら心配も少なくなります。Web広告やフリーペーパーへの出稿など、集客戦略を考えやすいのは大きなメリットです。
仕事とプライベートと分けやすい
気軽に仕事ができる自宅サロンですが、プライベートとの境がつきにくくなるとも言えます。自分の生活圏でお客様と会うのが気になったりするオーナーさんも多いのではないでしょうか。
仕事とプライベートをしっかり分けたいという方は、賃貸でのサロン開業がおすすめです。
移転ができたり、2店舗目の出店もできる
人気が出てきた時に考えたいのが店舗の増床。スタッフを雇ったり増床したりというのは賃貸サロンならでは。
賃貸であれば、売上が軌道に乗った時、こういった嬉しい変化も可能です。
賃貸のデメリット
家賃がかかる
分かりやすいデメリットは費用でしょう。
事業用の物件は、初期費用が大きな負担となります。物件によっては、初期費用として10か月分ほどの金額を支払う必要があることも。賃料だけではなく光熱費なども発生しますので、経営の計画を具体的に立てなければすぐに赤字になってしまうでしょう。
最初から家賃やスタッフの給料を払えるほどの収入を得ることができるのは稀です。早期に黒字を目指すためにも、集客や見込み顧客についてしっかりとプランを練りましょう。
居抜き物件とスケルトン物件
いざ、物件探しと意気込む前に、基本となる賃貸物件の種類を知っておきましょう。賃貸物件と一口に言っても多くの種類がありますが、ここでは
- 居抜き物件
- スケルトン物件
について説明していきます。どんな物件なら自分の考えたコンセプトと合うのか、具体的にイメージしながら探していきましょう。
居抜き物件
前の契約者が使用していた内装や設備がそのまま残っている物件を「居抜き物件」と言います。
飲食店など業種は様々ですが、前の契約者がエステサロンの場合、開店資金がかなり安く収まる場合も。これは居抜き物件の場合、前の契約者が使っていた設備や内装をそのまま使える場合があるからです。そのためかなり人気が高く、すぐに契約済みとなってしまう場合も多いですが、必ずチェックしたいところです。
しかし、自分のお店のイメージに合わない内装や設備の古さから、リフォームや買い替えが必要になることも多いのが事実です。本当にその設備が必要なのかはよく見極めるようにしましょう。
また、すべて無料ではなく“造作譲渡費”という費用が掛かることがあります。新品を購入するより安く、価格交渉も可能ですが、格安だからもらっておこうとなんでももらう必要はありません。結局使わなければ、廃棄に費用が掛かるため、価値を見極めて、金額交渉を行いましょう。
美容業界は、新しい技術を常に取り入れていくことも重要です。引きついだ機器が古く時代錯誤な技術しか提供できなかったり、機器の保証が使えなかったりしては意味がありません。安易に引き取らないようにしましょう。
スケルトン物件
居抜き物件の反対で、内装や設備を取り払ったむき出しのままの物件を「スケルトン物件」といいます。
内装をゼロから作ることができるので、自分好みの店をこだわって作れることがメリットです。しかし、その分費用も時間も手間もかかります。
また、解約時にも元に戻す必要があることも覚えておきましょう。
立地のタイプを考えよう
次に考えたいのが、店舗の立地。大きく3つのタイプに分けることができます。
路面店タイプ
人目に付きやすい道路に面した店舗で集客力の強さがメリット。人通りの激しい道沿いだったらそれだけで目立ちますし、新規のお客様が迷うことないのも魅力でしょう。
しかし、人目に付きやすいのはメリットですがデメリットとも言えます。ひっそりとした隠れ家のような雰囲気は出しにくいため、人によっては嫌がられることも。エステサロンに通ってる姿を見られたくないという女性には敬遠されるでしょう。
これに関しては、メリットでもありデメリットでもあるため、想定するターゲット層の心理を深く考えることが大切になってきます。また、賃料が高い物件が多いため、本当に利益が見込めるのかはよく見極める必要があります。
ビルインタイプ
商業ビルの1室で営業するタイプ。路面店よりも賃料を抑えることができますが、集客には一工夫必要です。ふらりと立ち寄るお客様は少なく、目的をもって来店する人がほとんどなのでホームページや予約サイト、看板などでの宣伝を行いましょう。
また、同じビル内のテナントによって、入りやすさも異なるため、女性向けの店舗が多い商業ビルがおすすめです。
賃貸マンションタイプ
商用利用ができるマンションやアパートを借りてエステサロンを開業する方法です。
自宅よりは費用がかかりますが、賃貸物件よりは内装や設備工事がかからないためコストも抑えることができます。ひっそりとした自宅サロンのような雰囲気も出せるので近年増えてきているタイプです。
前述したとおり、通常のマンションやアパートでは開業は難しいですが、住居用でも事業用でも使用できるSOHOタイプと言われるマンションがあります。まだまだ数は少なく、気に入る物件に出会えないなどの問題はありますが、商業エリアに増えてきており、おしゃれな内装も多くおすすめです。
SOHOタイプのマンションで注意したいのが、事務所としての開業はOKでも、店舗としてはNGの場合があります。不動産屋さんに確認するようにしましょう。
場所の選び方は?ポイントを解説
開業場所は、客層・サロンの相場・家賃などに関わってくるために慎重に選びたいところ。では実際に、どんなポイントに気を付けて物件を選べばいいのか考えていきましょう。
ターゲット(ペルソナ)に合ったエリア
まず、自分がどんなサロンを開業したいのかよく考えてください。
ターゲットだけではなく少し深堀りしてペルソナを想定しましょう。ペルソナとは、具体的なユーザー層のことです。
- 性別
- 年齢
- 職業
- 住んでいる場所
- 職場
- 収入
- 趣味
- 休みの日の過ごし方
- 悩み
- 家族構成
など、ペルソナがはっきりすると、どの物件であれば集客が可能なのか見えてくるはずです。
例えば、郊外に住む主婦向けのエステサロンだったら、駐車場があることが必須になってきます。このようにペルソナを想定することで店舗に必要となるポイントが変わってきます。お客様目線で来店しやすい店を作りましょう。
店舗周辺の治安・雰囲気
女性をターゲットにしたエステサロンを開業するにあたって、必ずチェックしたいのが治安の良さです。昼だけではなく夜の雰囲気、周りの町も確認するようにしましょう。
例えば、仕事帰りの女性をターゲットにした場合。仕事が終わった夜に店舗から駅まで一人で歩く際十分な明かりはあるか、駅前は安全なのか、これらは忘れてはいけない重要なポイントです。
また、エステサロンでリラックスしてほしいのに、騒音が気になったりしては意味がありません。気になる物件はできるだけ平日・休日、昼・夜といろんな時間に訪れるようにしてください。
コスト
駅に近い物件は集客の難易度は下がりますが、家賃が上がることがほとんどです。家賃の高さは、最低限の運営コストを上げることになります。
賃料についても「これくらいなら…」と妥協せず、しっかり考えましょう。
候補は数点見つけておく
良い物件はほかのサロン経営者も狙っています。先に契約されてしまうこと珍しくないため、候補地や物件は絞りすぎず、何件か候補を考えておきましょう。
譲れない条件もしっかり考えておくと、不動産屋さんからもおすすめしやすくなります。
重要な物件選び。譲れないポイントを決めて探そう
自分のペースで開業できる自宅サロン、自分の理想の店舗を作ることができる賃貸サロン。どちらもメリットデメリットがあることを紹介していきました。
物件選びはインターネットの情報だけではなく、実際に足を運びながらイメージすることが大切です。理想の物件選びに苦労するかもしれませんが、物件は今後のサロン運営に大きくかかわる重要なポイントです。
いくつか物件を回ることで自分の譲れないポイントも見つかってきますよ。
大切なのは、開業してから経営を軌道に乗せること。理想のサロンをイメージしながら、開業後を見据えて物件を探していきましょう。