毎年数多くのエステサロンが新しく出店されていますが、残念ながら、長く続くエステサロンは一部しかありません。中には開業からわずか1,2年という短い期間で廃業に陥ってしまうケースもあります。

廃業には様々な原因がありますが、その1つが肥大化したランニングコストです。思うように売上が伸びない中で、毎月多額の請求が来ることに頭を悩ませている経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、エステサロンのランニングコストについて詳細に解説していきます。少しでも出費を抑えて、経営状態を良くしていきたいという方はぜひご覧ください。

ランニングコストの把握は必須!

ランニングコストの肥大化によって廃業してしまうエステサロンは毎年何店舗もあります。しかし、自身のサロンのランニングコストがどれくらいか、正確に把握しているオーナーは意外と多くありません。

合計金額をざっくりと把握しているだけではコスト削減は難しいため、まずは何にどれほどの費用がかかっているのか、正確に把握することからスタートしましょう。

エステサロンでかかるランニングコスト

一般的にエステサロンで発生するランニングコストについて解説していきます。これからエステサロンを開業する方は特に参考にしてみてください。

  • 家賃
  • 人件費
  • 美容機器のレンタル代
  • 備品・消耗品購入費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費

家賃

エステサロンのランニングコストの中で、最も高額な出費の一つが家賃です。自宅を改装してエステサロンを運営する場合は例外ですが、賃貸やテナントを借りる場合には毎月家賃が発生します。

立地や間取りの広さによって家賃は全く異なりますが、数万円で済むこともあれば、数十万円かかることもあります。安ければ良いというわけではありませんが、多額の家賃が経営を圧迫してしまっているケースは少なくありません。

人件費

オーナーが1人で経営しているエステサロンも多く存在しますが、スタッフがいると、事業の領域は格段に広がります。同時に複数人の施術が行えるようになり、複数店舗の出店も可能です。

しかし、人を雇うにも当然コストがかかりますよね。社会保険も含めると、人を1人雇うには少なくとも毎月40万円ほどかかり、大きな出費になります。

美容機器のレンタル代

施術に使用する美容機器は非常に高額です。例えば、脱毛サロンで使用する業務用脱毛機は1台100万〜500万円程度であり、初期費用の中でも特に大きい割合を占めます。

簡単に購入できる金額ではないため、メーカーによってはそのような美容機器のレンタルサービスを行っています。料金は1台当たり月額数万円程度ですが、積み重なると決して小さくない負担になるでしょう。

備品・消耗品購入費

エステサロンを経営するには定期的に備品や消耗品を買い足す必要があります。お客様が使用するタオルや化粧品などもその類です。

お客様が直接触れるものに関しては、一定の品質を保っておく必要がありますが、もし現在使っているものより安価なもので代用できるのであれば、積極的に取り入れていきましょう。

水道光熱費

水道光熱費も毎月必ず発生するコストですが、エステサロンは水や電気を特別多く消費するわけではありません。規模にもよりますが、料金は一般家庭とそう大きく変わらないでしょう。

そのため、水道光熱費を大幅に節約することは難しいですが、料金プランを見直すことで今より安くなる可能性があります。普段の水や電気の使用量を確認し、現在のプランが最適であるか調べてみましょう。

通信費

エステサロンでもパソコンやタブレットを使う機会は多いため、Wi-Fiは必須であり、毎月通信料がかかります。とはいえ、特別な作業をするわけではないため、通信規格が優れているオフィス用のWi-Fiなどではなく、家庭用で十分です。

広告宣伝費

集客のための広告宣伝費もエステサロンには必要な出費だと言えます。特に開業したばかりの個人サロンは知名度が低いため、できるだけ多くの方法で宣伝するのが望ましいです。

ホットペッパービューティーのような予約サイトなどの掲載料も広告宣伝費に含まれます。

ランニングコストは2種類に分類可能

代表的なランニングコストを一つひとつ解説いたしましたが、これらは「固定費」と「変動費」の2つに分類されます。それぞれがどのような特性を持っているか理解しておきましょう。

固定費

固定費とは、文字通り毎月の出費額がほぼ固定されている費用のことで、基本的に売上が変動しても影響を受けることはありません。つまり、仮に全く来客がなく、売上がゼロであっても固定費は発生してしまうということです。

ただ、逆に言えばどれだけ売上が伸びても固定費の額はほぼ一定です。家賃や人件費などが固定費に当たります。

変動費

必ずしも比例するとは限りませんが、売上に応じて額が増減するのが変動費です。消耗品や備品の購入費用、広告宣伝費も基本的には変動費に含まれますが、売上が増えれば増えるほど、それらの額も上がります。

つまり、売上に対してどれだけ原価の割合を抑えられるかが、変動費を抑えるポイントということになります。

ランニングコストを分類する理由

ランニングコストを固定費と変動費に分類した理由は、損益分岐点を計算するためです。

損益分岐点とは、上図の中の赤い丸を指します。

売上に関わらず一定額が発生する固定費と、売上によって増減する変動費。シンプルに計算すれば、この2つの合計がエステサロンの費用になります。

売上がそのラインを上回れば利益、下回れば損失が生まれることになりますが、損益分岐点とは売上と費用が完全に重なるポイントを指します。それを算出するためにも、ランニングコストは固定費と変動費に分けて算出する必要があります。

ランニングコストを抑える方法は?

ランニングコストを抑える方法を具体的に紹介していきます。この点も固定費と変動費に分けて解説していきます。

固定費を削減する方法

項目にもよりますが、固定費はもともと金額が定まっているため、コストを削減することは容易ではありません。

例えば、家主に家賃の交渉をしても、安くしてもらえる可能性は低いですよね。また、人件費に関しても、本人の意志に反して減給や退職を強いることは違法になります。

そのため、まずは通信費や水道光熱費のような、契約内容を変更できる費用から確認してみましょう。現在のプランを見直すと同時に、もっと安い会社がないか調査してみることもポイントです。

大幅に費用をカットできるわけではありませんが、気軽に確認することができます。

変動費を削減する方法

タオルや化粧品類など、エステサロンには細々とした消耗品がたくさんあります。一つひとつは特に高価ではなくても、積み重なるとそれなりの出費になるでしょう。

そんな変動費を抑えるためにまず重要なのは、仕入れる原料の選定です。本当に必要であるか、安価なもので代用できないか、など幅広く調べてみましょう。同じ商品であっても、仕入れ先や一度に仕入れる量を変更することで、コストを抑えられる可能性があります。

また、分析によって改善する可能性が高いのが広告宣伝費です。反響が良かったユーザーに絞って広告を出稿することで、集客効果はそのままに、コストを抑えることができます。

開業時には何ヶ月の運転資金が必要?

当然のことながら、エステサロンを開業してもすぐお客様がたくさん来店するわけではありません。来店数がゼロの日も珍しくないでしょう。

そのため、売上が安定するまでのランニングコストをあらかじめ蓄えておくことが望ましいです。

蓄えは多いに越したことはありませんが、一般的に推奨されているのは半年分。仮に毎月のランニングコストが30万円だとすると、180万円ほどの蓄えを持った状態でスタートするのが理想的です。

ランニングコストを抑えて負担の少ない経営を

今回紹介したランニングコストはあくまで一般的に発生するものなので、エステサロンによっては他にも様々な費用が発生します。文中でも述べた通り、まずはランニングコストの内訳を明らかにし、手の付けられそうなところから改善していくことが大切です。

そういった地道な経営努力を積み重ねていくことで、結果的に大きな節約に繋がります。長年運営し続けていくことを視野に入れて、負担の少ない経営を目指していきましょう。