エステサロンを開業するには数百万円という多額の資金が必要になり、多くの場合、何らかの方法で資金調達を行う必要があります。
一般的には、
- 地元の金融機関
- 日本政策金融公庫
- 信用金庫
これらのような機関から融資を受けることが選択肢として挙がります。しかし、融資ではなく、返済義務がない補助金や助成金もエステサロンの開業・運営に活用できることをご存知でしょうか。
今回のコラムでは、経営に活用したい補助金と助成金について解説いたします。エステサロンのほか、脱毛サロン・美容サロンなどの事業計画を立てている方は、ぜひご覧ください。
※2022年5月時点での情報です。各助成金・補助金の詳細については、各ホームページをご覧ください。
助成金と補助金の違いは?
詳しい内容を見る前に、まずは助成金と補助金の違いについて確認していきましょう。
助成金とは?
「助成金」は大きく分類すると、厚生労働省が所管している雇用関係の助成金と、経済産業省が所管している研究開発系の助成金の2種類に分かれます。美容サロンのオーナー様が活用を検討するのは、雇用関係の助成金となるでしょう。
助成金の特徴としては、返済義務がなく、申請条件を満たしてさえいれば、書類に不備がない限り、基本的にどの企業でも受給することができます。ただし、受給した助成金は課税対象となることに注意しなければいけません。
また、助成金の中には「生産性要件」という項目が設けられたものが多くあります。要件に該当する場合、助成金を割り増しして受け取ることができます。
企業における生産性向上の取り組みを支援するためのもので、日本全体の労働時間の長さに対する生産性の低さが問題視されたことから取り入れられています。助成金を申請する際は、生産性要件が設定されているか、確認してみましょう。
補助金とは?
「補助金」は経済産業省や中小企業庁が取り扱っている融資・補助金を指します。
助成金と同様に返済義務はありませんが、大きな違いは必ずしも受給できるわけではないということです。採用枠に上限が設けられている事が多く、条件を満たして申請をしても、審査で不採用になってしまう可能性があります。
また、どの補助金に関しても、基本的には開業後に報告書を提出する必要があります。エステサロン開業の際は、先に助成金の申請を済ませ、開業の資金を調達してから補助金の申請を行うのが最も効率的な手法です。
エステサロン開業に役立つ助成金
まずは助成金からチェックしていきましょう。
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 両立支援等助成金(出生時両立支援助成金)
- 地域雇用開発助成金
キャリアアップ助成金
スタッフの待遇改善に取り組んだ場合に受給が可能です。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
2022年5月時点では、以上の7コースが用意されています。定期的にコースの見直しが行われているため、資金調達のため申請を考えた場合はその際に一度最新の内容をチェックしておくのがよいでしょう。
なお、今回のコラムでは、特に多くのサロンで利用しやすいと思われる「正社員化コース」を取り上げてご説明します。
正社員化コース
契約社員などの有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合、または直接雇用した場合に助成金を得られます。労働者を正規雇用者に転換などした場合、転換前の6カ月と転換後の6カ月の賃金を比べて3%以上増額していた場合、対象に当たります。
ただし、基本給および定額で支給されている諸手当を含む総額となります。賞与は含みません。
キャリアアップ助成金の支給額
- 有期雇用から正規雇用になった場合、57万円が支給されます。
- 有期雇用から無期雇用になった場合、もしくは無期雇用から正規雇用になった場合は、28万5千円が支給されます。
全てのパターンを合計した1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人までとなっています。なお、これらは中小企業の場合です。
キャリアアップ助成金の各種加算措置
2022年5月現在、キャリアアップ助成金については以下のような加算措置が取られています。
- 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合:285,000円加算
- 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合:95,000円加算
- 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正規雇用労働者へ転換等した場合:95,000円加算
- 「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換等した場合:95,000円加算
今後の動向次第で変更点が生じる可能性があるので、申請時には専門家に相談するのがよいでしょう。基礎的な条件の達成が難しくなく、通常通りスタッフを雇って正社員化する中で助成金を申請できるのが大きなメリットです。
事前にキャリアアップ計画の提出が必要になりますので、準備を念入りに行いましょう。
人材開発支援助成金
人材の育成や教育に力を入れている事業主に対して支給されます。スタッフの技術向上や必要資格取得を目的とした休暇制度や短時間労働に対応している企業、社内検定制度を採択した場合などに申請ができます。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 特別育成訓練コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 人への投資促進コース
2022年5月現在、以上のコースが用意されています。今回はその中でも、エステサロンとの関係性が強い二つのコースを紹介します。
特定訓練コース
雇用する正社員が、厚生労働省の認可を受けた訓練を実施する際に、その経費や訓練中の賃金の一部を助成するコースです。
- OJT付き訓練
- 若年者への訓練
- 労働生産性向上に資する訓練
例としてはこのような訓練が挙げられ、最低でも10時間以上の訓練を受ける必要があります。
一般訓練コース
雇用する正社員が、業務に関連する訓練を実施する際に、その経費や訓練中の賃金の一部を助成するコースです。一般訓練コースに前述した特定訓練コースは該当せず、20時間以上の訓練時間が必要になります。
両立支援等助成金(出生時両立支援助成金)
両立支援等助成金は、従業員が育児休業や介護休業を取りやすい環境づくりを目的として設置された助成金です。育児や介護と、仕事を両立するための制度導入や育児休暇を利用しやすい環境づくりなどが申請の条件に該当します。
単に職場環境を整えるという意思表明だけではなく、具体的にどのような施策をいつ実施するのかを計画し、実行しなければなりません。2022年5月時点で以下のコースが用意されています。
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 不妊治療両立支援コース
- 女性活躍加速化コース
各コースによって条件や給付額が異なります。2021年には新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、それに対応した休暇取得コースも整えられましたが、2022年版では取り除かれることになりました。
地域雇用開発助成金
地域の雇用拡大のために作られた助成金で、雇用機会が特に不足している指定地域に店舗を開業し、その地域の居住者を雇用した場合などに支給されます。設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて増減しますが、40万円から900万円の助成金が3年に渡り、年1回ずつ支給されることになります。
ハローワークなどの紹介により労働者を雇い入れること、明瞭性の高い会計や労働管理が求められます。対象地域は以下の3つの区分のうち、いずれかに該当する地域です。
- 同意雇用開発促進地域
- 過疎等雇用改善地域
- 特定有人国境離島地域等
過疎地域や離島など、持続的な雇用や就業が難しく改善が必要なエリアが該当しています。事業者の境遇によってはお店を開きやすい地域が該当する可能性もあるので、一度厚生労働省のホームページで確認してみるのがよいでしょう。
参考:厚生労働省「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」
エステサロン開業に役立つ補助金
次にエステサロンでも活用できる補助金を紹介します。
- 小規模事業者持続化給付金
- IT導入補助金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、経営計画に沿って販路開拓や生産性向上の取り組みを行う小規模事業者をサポートするための補助金です。
- 新たな商品やサービスの開発に関する経費
- 既存のサービスや製品の販路開拓に関する経費
上記の条件を満たす場合、補助金で賄うことが可能です。エステサロンとしては、例えば以下のような例が該当します。
- 高性能な機器や関連用品の購入によるサービス向上
- 新規顧客の呼び込み、及び既存顧客の維持
- ホームページなどを活用した集客
補助金ですので選考が必要になるほか、「小規模事業者」という名前が付いた補助金なので、サービス業なら「従業員5人以下の事業者が対象」といった規定があります。
IT導入補助金
「IT導入補助金」は小規模事業者・中小企業を対象都市、生産性向上につながるITツールの導入にかかる費用を補助するものです。
- 勤怠管理システムの導入
- 顧客予約・管理システムの導入
- キャッシュレス決済システムの導入
- その他作業効率化システムの導入
- IT化に伴うパソコンやプリンターなどの設備費用 など
以上のような項目が、最大で費用の2分の1まで補助されます。30〜450万円の範囲という制限があるほか、申請区分により金額は異なるため確認が必要です。
補助金と助成金を活用しよう
サービス業であるエステサロン業界にとって、お客様にご満足頂くための設備投資は必須です。
しかし、多額の開業支援を自身が所有している資金だけで賄うことは難しく、融資を受けるとしても、結局は有利子で返済しなければいけません。ここまでご紹介してきた助成金や補助金を上手く活用し、十分な資金を調達するよう、対策しましょう。
総合美容機器メーカーである株式会社NBSでは、エステサロンの開業・運営支援事業も行っています。資金問題のほか、経営ノウハウや人事採用など、サロンオーナー様を全面的にサポートさせていただきますので、これからサロン開業を予定されている方も、何かお悩み事があれば、気軽にお問い合わせください。
※2022年5月時点での情報です。各助成金・補助金の詳細については、各管轄行政や専門機関のホームページをご覧ください。